2017 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of nitrogen loss from forested watersheds by coupling a plant-soil N cycling model and a hydrological model
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17K15286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 慶太郎 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (60549426)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 硝酸態窒素 / 窒素飽和 / 窒素沈着 / ナラ枯れ / シカ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在日本では種々の森林攪乱が同時多発的に進行しており,流域源流部の森林における窒素保持・流出メカニズムの解明と攪乱影響の予測が喫緊の課題である。日本の森林は欧米に比べ,植物-土壌間の内部循環系に加えて斜面の水移動過程も窒素保持・流出の主要な規定要因と考えられるが,これまで統合的に考えられてこなかった。本研究では,日本各地の森林集水域で計測された窒素内部循環と降水・渓流水質の実測値を用いて窒素保持・流出メカニズムを解明する。 2017年度は,窒素飽和の疑われるコナラ二次林,窒素乾性沈着量が多いと思われる農耕地・放牧地に隣接したミズナラ二次林,ナラ枯れの発生したミズナラ天然林,シカ食害の発生したミズナラ天然林を中心に,窒素沈着量,渓流水中の硝酸態窒素濃度,土壌窒素動態を測定し,データ整理を行った。 いずれの調査地においても,高い窒素沈着量や植生の衰退に伴って渓流への硝酸態窒素の濃度上昇が見られたが,その程度は沈着量や消失した植生のバイオマスに比例せず,非線形な関係性が示唆された。これは生態系における窒素保持機能の制御機構がサイト間で異なることに起因している可能性があり,その差異を生じさせる原因について今後さらなる解析を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度途中における所属機関の変更によって,化学分析や解析でやや遅れが発生しているが,他の共同研究を通して,解析対象の調査地の充実化を図ることができ,全体として順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,渓流水・植物・土壌の化学分析を進める。一部の試料については,硝酸態窒素・酸素の安定同位体比の測定を行って,湿性沈着によって流入した硝酸態窒素が無い循環系を経て流出に至る経路について明らかにしていく。 また,大気-植物-土壌-渓流までの一連の窒素動態について攪乱応答を予測するシミュレーションモデルを構築するために,既存モデルをレビューし,本研究で得られた実測値をもとにそれらの改良を進めていく。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更があり,調査地までの旅費が少額になったため。次年度では,新たに加わった調査地への旅費に使用予定である。
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