2020 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of nitrogen loss from forested watersheds by coupling a plant-soil N cycling model and a hydrological model
Project/Area Number |
17K15286
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福島 慶太郎 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (60549426)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 硝酸態窒素 / 安定同位体 / 窒素沈着 / 窒素収支 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在日本では種々の森林攪乱が同時多発的に進行しており,流域源流部の森林における窒素保持・流出メカニズムの解明と攪乱影響の予測が喫緊の課題である。日本の森林は欧米に比べ,植物-土壌間の内部循環系に加えて斜面の水移動過程も窒素保持・流出の主要な規定要因と考えられるが,統合的な把握についてはいまだ不十分である。本研究では,日本各地の森林集水域で計測された窒素内部循環と降水・渓流水質の実測値を用いて窒素保持・流出メカニズムを解明することを目的とした。 2020年度は,日本国内の複数の森林集水域を対象として採取された渓流水や降水の硝酸態窒素濃度および窒素・酸素安定同位体比の分析を進めたほか,長期的な流量データの補正を行い,各サイトの窒素収支を算出した。ほとんどの森林集水域で窒素流出が流入を下回ったが,一部の集水域については上回る結果となり,窒素飽和が疑われた。しかし,窒素沈着量が欧米で報告される基準値以下にもかかわらず,窒素飽和がみられた森林では,シカによる下層植生の消失に起因して窒素が流出していること,隣接する耕作・放牧地から分水嶺を越えて地下水経由で硝酸態窒素が湧出していること,などが原因として考えられた。 森林からの窒素流出を再現するモデルの構築にあたり,PnETモデルとTOPMODELの統合化を進めているが,下層植生や集水域外の影響といった新たなプロセスを組み込む必要が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既存のデータを解析して集水域の窒素収支とその制御要因について考察することができた。また,森林集水域の窒素収支の制御要因のさらなる解析に向けて,植物-土壌間の窒素循環についてはPnETモデルを,森林斜面からの水移動に伴う窒素流出を扱うモデルとしてTOPMODELの試行を進めた。しかしながら,これらのモデル試行結果と実際の渓流水硝酸態窒素濃度の整合性については,いまだ不十分なところが多かった。当初目標としていた森林の窒素循環と斜面水移動のモデル統合により硝酸態窒素濃度形成を十分説明することについては,現在十分に至っておらず,今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素収支の制御要因について,大気-植物-土壌-河川流出の一連のプロセスを包括したモデルを構築することによって明らかにするために,TOPMODELとPnET-CNモデルの結合を念頭にしつつ,より適切かつ簡便なモデルの選択・改良を進めていく。また,渓流水中の硝酸態窒素の季節変化が,集水域からの窒素流出を制御する主要な生物地球化学的要因の指標となっている可能性があり,国内外の硝酸態窒素濃度のデータをさらに収集して解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス拡大防止により,予定していた調査や共同作業が必要な研究打ち合わせを行うことができず,また学会等がオンライン開催となり,その分の旅費を使用できなかった。次年度は,上記の目的のために残額を使用する予定である。
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Research Products
(20 results)