2017 Fiscal Year Research-status Report
Isotopic study on interaction between nitrogen deposition, retention, export in forested watersheds.
Project/Area Number |
17K15288
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
尾坂 兼一 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (30455266)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素化合物 / 集水域 / 安定同位体比 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度には調査予定地であった滋賀県の桐生水文試験地のM、A、R、H、Kの5集水域において、月に1度の頻度で渓流水採取し、それぞれの集水域において降雨時に連続的な渓流水採取を8月(139.2 mm)、9月(26.4 mm)、10月(251.5 mm)の計3回行った。またM、A、R、Hの4集水域において月に1度林内雨を採取した。採取した試料水からは溶存態窒素(TDN)、硝酸イオン(NO3-)を含む各種溶存イオン、溶存有機炭素(DOC)、硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比の測定を行った。 林内雨のTDN、NO3-分析から、本研究地のM、A、R、H集水域それぞれに大気降下物として供給されるTDN、NO3-量は同程度であることが明らかになった。平水時の渓流水中の硝酸イオン濃度はM> A>K>H>R、降雨時に渓流水中の硝酸イオン濃度はM=A>K>R=Hであり概ね一致した。流出するNO3-に含まれる大気降下物由来のNO3-の割合はR=H>=A=K>Mの順であったが、上述のようにR、H集水域では渓流水中のNO3-濃度そのものが低く、集水域から流出する大気降下物由来NO3-量は全ての流域で同程度であった。 4月、7月、10月にそれぞれの集水域の5地点(A流域のみは3地点)の0-10、20-30cmの土壌を採取し、2 mmの篩を通し絶乾した後、全窒素と全炭素の測定を行った。また土壌をKCl抽出した後、KCl抽出溶液中のアンモニア(NH4+)濃度とNO3-濃度の測定を行った。土壌中の無機態窒素濃度はほとんどがNH4+の形態でありNO3-態の窒素は極めて少なく、NO3-生成速度も極めて遅かった。各流域の土壌中のNO3-濃度、生成速度はA=M>R=Hであり、平水時、降雨時の渓流水中のNO3-濃度と概ね一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の達成のためには、設定した5集水域における平水時、降雨時の渓流水質調査、窒素流入量、土壌調査が必要不可欠であるが、その全てにおいて観測機器の設置、調査の開始、試料の採取、分析を行うことができたので「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように平成29年度はおおむね順調に研究を進めることができた。そのため今後の研究推進方策は申請書の計画どおり降雨時の渓流水質調査、降水質調査、壌調査、解析を引き続き行う。平成30年度も調査を引き続き行うことで、ある程度まとまった期間のデータが得られるため、平成30年度は、それぞれの集水域における土壌中の窒素動態、蓄積量と流出窒素量の関係に関する解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
安定同位体比の分析数が想定量よりも少なく、その消耗品費を中心に余剰が生まれた。反対に、今後の安定同位体比分析量は想定量よりも増加するため、この余剰分は今年度以降の安定同位体比分析消耗品費に当てる予定である。
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