2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15318
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
寺原 猛 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (70547059)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海底堆積物 / 微生物 / クロム / バイオサーファクタント |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は、レアメタル回収能を有する微生物の探索と同定、および分離された微生物の分類学的性状や種々の条件でのレアメタル回収能について調べることを目的とした。初年度に引き続き、本学の練習船「ひよどり」を活用し、東京湾の荒川・江戸川・多摩川の河口域などで海底堆積物を採取し、微生物の分離源とした。種々の濃度の六価クロムを含有する寒天培地を用い、微生物を分離・培養した後、新たな培地に分離した菌株を画線し、純粋分離を行った。次に、六価クロム(150 mg/L)含有培地で更なるスクリーニングを行い、29菌株を新たに六価クロム耐性菌として分離した。これらの菌株については六価クロムを含有した液体培地での培養を行い、培養液中の六価クロム濃度の変化を調べ、クロムの回収能について調べているところである。 また、海洋由来細菌が産生するバイオサーファクタント(BS)を活用した重金属の除去が報告されていることから、初年度に引き続き、BS生産菌の分離も行った。上述した東京湾の海底堆積物を分離源とし、唯一の炭素源として滅菌したOlive oilもしくはEngine oilを加えた培地にて微生物を分離・培養した後、分離菌株のBS生産をOil spreading testにより評価した。その結果、BS生産が確認された菌株は86株であった。これらの菌株に対し、クロムなどの重金属の除去・回収に関して、今後さらに解析を行う予定である。また、初年度に大槌湾より分離され、新種の可能性が考えられた菌株について、最も相同性が高かった既存の細菌種2株との種々の分類学的諸性状を比較し、その2株との違いが明確であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画どおりに、本学の練習船「ひよどり」を活用し、東京湾の荒川・江戸川・多摩川の河口域などで海底堆積物を採取することができた。ただし、初年度に興味深いバイオサーファクタント(BS)生産菌が分離された岩手県大槌湾での海底堆積物の採取は、採取予定日の天候不順により残念ながら実施することができなかった。 2年目は、レアメタル回収能を有する微生物の探索と同定、および分離された微生物の分類学的性状や種々の条件でのレアメタル回収能について調べることを目的としており、クロムを対象として微生物の探索を行った。その結果、六価クロム耐性を有する29菌株を新たに選抜することができた。これらの菌株のクロムの回収能について調べているところである。 また、新たにBS生産菌として86菌株を分離した。16S rRNA遺伝子に基づいた同定を行い、BSの性状(金属イオンとの結合が見込まれるアニオン性など)について調べているところである。また、初年度に大槌湾より分離され、新種の可能性が考えられた菌株について、最も相同性が高かった既存の細菌種2株との種々の分類学的諸性状(ゲノム配列、基質資化性、酵素活性など)を比較し、その2株との違いを明らかにした。そこで、大槌湾より分離された菌株を新種として提唱するために、国際論文誌に実験結果をまとめて投稿した。 以上のことから、レアメタル回収能についてはさらに調べることが必要であるが、六価クロム耐性菌や重金属の除去の報告例があるBS生産菌を新たに分離し解析していること、分離された微生物の分類学的性状について、大槌湾より分離された菌株を特に調べ、実験結果をまとめて国際論文誌に投稿し、新種として提唱中であることなどから、概ね計画通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画どおりに、分離された微生物の分類学的性状や種々の条件でのレアメタル回収能について調べる予定である。また、2年目に実施できなかった岩手県大槌湾からの海底堆積物の採取を行う予定である。 そして、分離された微生物について、16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく同定や分類学的性状、ならびに種々の条件でのレアメタル回収能を調べることとする。さらに得られた微生物の性状に応じ、レアメタル回収を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
2年目はレアメタル回収能を有する新規海洋微生物の探索を続けるとともに、分離された微生物の分類学的性状の解析を行ったが、実施予定であった岩手県大槌湾からの海底堆積物の採取が実施できなかった。また、種々の条件でのレアメタル回収能の解析について、そのいくつかを次年度に実施することにしたため、次年度使用額が生じた。 2019年度は分離された微生物について、同定や分類学的性状、ならびに種々の条件でのレアメタル回収能を調べ、さらに得られた微生物の性状に応じ、レアメタル回収を試みる予定である。
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