2017 Fiscal Year Research-status Report
血球貪食性組織球肉腫は腫瘍なのか?マクロファージの自己認識の破綻からのアプローチ
Project/Area Number |
17K15381
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高橋 雅 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 助教 (40750419)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 組織球肉腫 / 犬 / マクロファージ / 貪食 / CD47 / SIRPα |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、イヌの組織球肉腫症候群はさらに樹状細胞由来のものを組織球肉腫(孤立性もしくは播種性)、マクロファージ由来のものを血球貪食性組織球肉腫(HHS)と細分類されている。血球貪食性組織球肉腫に関しては有効な治療に関する報告は存在せず、血球貪食性組織球肉腫に対する治療法の確立は小動物臨床の分野において早急に行って行かなければならない事項である。 犬の血球貪食性組織球肉腫はマクロファージによる顕著な血球貪食像を特徴とした増殖性悪性腫瘍とされているが、本研究は腫瘍性疾患ではなくマクロファージの貪食能の異常による疾患であると仮説した研究である。血球貪食症候群と類似した疾患の特徴を有するヒトの血球貪食症候群では、CD47-SIRPαシグナルによる貪食抑制シグナルを破綻させることが発症と関与していることが報告されており、犬においてこのCD47-SIRPαシグナルに関する基礎的検討を計画した。CD47-SIRPαシグナルが関与していることがあきらかとなれば病態の把握だけでなく、新規治療の標的となるため非常に重要である。 本年度は、犬の各血球におけるCD47およびSIRPαの発現分布をフローサイトメトリーにより評価し、それぞれヒトの血球での発現と類似していることを明らかにした。また、異なる犬種において測定し犬種による差があるかを検討した。今後は培養マクロファージにおいて炎症性サイトカイン刺激によるSIRPα発現量の変化に関して研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた犬のCD47およびSIRPαの塩基配列の決定は、科研費申請後に先行論文が報告されたことに気づいたため、研究を中断した。健常犬における発現量および発現分布の解析は順調に進んでいる。しかし、今年度は血球貪食性組織球肉腫および組織球肉腫に罹患した犬が来院してないため、予定していた実際の症例におけるCD47,SIRPαの発現解析および炎症性サイトカインの測定は実施できていない。また、次年度に予定していた末梢血中の単球から分化させたマクロファージを炎症性サイトカインにより刺激した際のSIRPαの発現の変化に関する研究に着手してはいるが、結果は十分には得られていない。そのため総合的に判断するとやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず現在進行中である培養マクロファージでの炎症性サイトカイン刺激によるSIRPαの発現量の変化に関する研究を継続する予定である。臨床症例が予想より少なく、今年度は来院しなかったことに対応するために、過去の症例の病理組織切片を利用して、免疫組織化学により発現を評価する研究を追加検討する。
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Causes of Carryover |
計画していた研究の一部を中断したため。さらに計上していたサーマルサイクラーの購入が必要なくなったため。また、年度内に納入が間に合わない物品もあったため。 当初予定していた研究計画の進捗状況もやや遅滞していることもあり、この予算については引き続き物品費に組み込み使用していく予定である。
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