2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K15645
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 裕一 九州大学, 医学研究院, 講師 (00597643)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨軟部腫瘍 / 遺伝子転座 / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、昨年度までにNAB2-STAT6融合遺伝子解析及びSTAT6免疫染色により診断を裏付けられた孤立性線維性腫瘍(SFT)150例に関する病理組織学的データを解析し、悪性化を起こす症例には富細胞性領域や多結節状構造が見られることを明らかにし、これらの組織学的特徴を有する領域にはRbタンパク欠失やRB1遺伝子欠失が見られることを明らかにし、脱分化した成分にはp53の陽性像および遺伝子変異が見られることを明らかにした。これらのことから、SFTの悪性化には多段階発癌に類似した多段階的悪性化機構が関与していると考え、特にRB1遺伝子とp53遺伝子の変異がこの多段階的悪性化機構に関与していると推定された。同内容を論文化し、現在投稿中の状態である。 また、血管周囲類上皮細胞腫瘍(PEComa)に対してTFE3遺伝子転座を検出するため、PEComa 90例に対してTFE3 FISHおよびTFE3免疫染色を施行した。TFE3 FISHは有意なシグナルが得られず、条件を再検討する方針である。TFE3免疫染色では、90例中13例に核陽性の所見を認め、陽性例は組織学的に主に類上皮形態の腫瘍細胞から構成される傾向があった。引き続き遺伝子解析を施行する方針である。 加えて、結節性筋膜炎および結節性筋膜炎疑い症例120例に対して、MYH9-USP6融合遺伝子解析を施行した。RT-PCR法では9例の融合遺伝子陽性例が得られた。引き続きUSP6- FISHを施行するとともに組織学的にレビューを行い、真の腫瘍性病変と反応性病変における組織学的差異を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに、隆起性皮膚線維肉腫100例、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍40例、滑膜肉腫100例、線維形成性小円形細胞腫瘍15例、間葉性軟骨肉腫10例、類上皮血管内皮腫10例、分類不能/未分化小円形細胞肉腫20例、胞巣状軟部肉腫50例、粘液性脂肪肉腫100例、グロムス腫瘍80例、孤立性線維性腫瘍150について大部分の症例で融合遺伝子のデータが利用可能な状態であり、今年度新たに結節性筋膜炎120例とついても利用可能な状態となった。 昨年度までに収集された情報を利用し、新たに孤立性線維性腫瘍の悪性化に関する論文を執筆し投稿中の状態である。また、昨年度新たに収集した結節性筋膜炎のデータを利用し、組織学的評価を追加して、真の腫瘍としての結節性筋膜炎と反応性病変との境界を明らかにするべく論文を作成する方針である。また、粘液性脂肪肉腫に関しても、昨年度までに準備された融合遺伝子のデータを利用し、組織亜型と遺伝子の関係性を明らかにすべく解析を行う方針である。 また、融合遺伝子に関連した免疫組織化学的マーカーを検索する方針であるが、昨年度は結節性筋膜炎に対しUSP6免疫染色を行った者の、診断学的意義は明らかでなかった。他の融合遺伝子関連の免疫組織化学的マーカーに関しても、診断学的意義あるいは治療ターゲットとしての意義を明らかにする方針である。 上記の内容を踏まえ、研究の進捗はおおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在対象として展開されている腫瘍は、孤立性線維性腫瘍、グロムス腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、胞巣型横紋筋肉腫、胞巣型軟部肉腫、類上皮血管内皮腫、血管肉腫、滑膜肉腫、骨外粘液性軟骨肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、Ewing肉腫、未分化小円形細胞肉腫、軟部血管線維腫、リン酸塩尿性間葉系腫瘍、低悪性度線維粘液性肉腫、腱鞘巨細胞腫、胞巣状軟部肉腫、血管周囲類上皮細胞腫瘍、結節性筋膜炎、脂肪芽腫であり、昨年度までと同様に、新たな融合遺伝子が発見され次第、新たにこれに加えて解析を行っていく方針である。 骨軟部腫瘍のデータは整理されており、融合遺伝子のデータを得次第利用可能な状態であるため、最新の知見を利用してそれらの意義について臨床的あるいは病理組織学的な知見から解析を行うことが可能である。 次年度は最終年度であり、これまでに集積された融合遺伝子解析のデータおよび免疫染色のデータを利用し、診断学的意義や臨床予後における意義を解析し明らかにするとともに、論文化し社会に還元することを目指す。
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Research Products
(10 results)