2017 Fiscal Year Research-status Report
がん代謝で制御される抗酸化代謝フラックスが抗がん剤耐性に及ぼす影響
Project/Area Number |
17K15673
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石野 孔祐 日本医科大学, 医学部, 助教 (60584878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん代謝 / 2-デオキシ-D-グルコース(2DG) / 抗がん剤感受性 / シスプラチン / N-アセチルシステイン(NAC) / MIAPaCa2 細胞 / 活性酸素種(ROS) / 抗酸化代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん代謝は、がん細胞がさまざまな環境に対応できるように代謝を解糖系優位にリプログラミングした結果であり、そのため劣悪な環境にも対応できるために、抗がん剤の作用にも耐性を発揮することが示唆されている。近年ではこれらのがん代謝はドライバー遺伝子を始めとする様々ながん関連遺伝子の制御によりリプログラミングを受けていることが明らかとなってきた。また、がん代謝ががんの速い増殖を支えるための生体高分子の産生に寄与するのみならず、増殖で生じる活性酸素種(ROS)を抑制するための対抗手段として機能している可能性が示されており、がんにおける代謝の変化はその複雑な代謝クロストークも相まって全容解明には未だ至っていない。 解糖系阻害薬である2-デオキシ-D-グルコース(2DG)をがん細胞株に投与すると、細胞死を誘発するとともに細胞内グルタチオンなどの抗酸化代謝物の著明な減少を引き起こす。さらに本研究の先行研究として2DG投与細胞のプロテオーム解析において、がん関連遺伝子の下流タンパク質群が発現変化を示した。本研究は、がん細胞における解糖系阻害を介した抗酸化代謝物の制御が細胞死を引き起こすという実験的証拠に基づき、がん代謝が抗がん剤感受性に及ぼす影響を理解することを目的する。 平成29年度は、2DG投与による膵がん細胞株 MIAPaCa2 の細胞死が、抗酸化物質である N-アセチルシステイン(NAC)を共投与することで抑制されることを確認した。さらに、MIAPaCa2細胞に抗がん剤シスプラチンを2DGと共投与することで、細胞死が相乗的に増加すること、その細胞死がNACによりレスキューされることを見出した。 これらのことから、2DGにより誘発される活性酸素種(ROS)が、シスプラチンの抗がん作用を増加していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた2DGと抗がん剤の相乗的作用については確認できたが、複数細胞種での解析、細胞内の抗酸化代謝物の定量的評価に至ることが出来なかったため。理由として2DGと抗がん剤の処理濃度の検討に、想定以上に時間がかかってしまったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画で実施できていない実験について実施するとともに、平成30年度に予定している、xenograft モデルを用いた in vivo 実験についても細胞での検討が進み次第、実施する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の研究計画が当初の予定よりも遅れているため。既に測定キットや代謝物標品などは購入済みであるが、現時点で1セットのみの購入である。平成30年度に遅れている実験を実施予定のため、当初の2年目以降の計画と合わせて計画通りの使用計画となる予定である。
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