2018 Fiscal Year Research-status Report
がん代謝で制御される抗酸化代謝フラックスが抗がん剤耐性に及ぼす影響
Project/Area Number |
17K15673
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石野 孔祐 日本医科大学, 医学部, 講師 (60584878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メトホルミン / A549細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん代謝は、がん細胞がさまざまな環境に対応できるように解糖系優位に代謝をリプログラミングした結果であり、そのため劣悪な環境にも対応できるために、抗がん剤の作用にも耐性を発揮することが示唆されている。増殖で生じる活性酸素種 (ROS) を制御するための対抗手段として機能している可能性が示されており、がんにおける代謝の変化はその複雑な代謝クロストークも相まって全容解明には未だ至っていない。 平成30年度は、膵がん細胞株MIAPaCa2と肺がん細胞A549に対し、2-デオキシグルコース (2DG) と抗がん剤など薬剤を投与し、細胞死誘導における相乗作用をN-アセチルシステイン (NAC) あるいは糖質Aが抑制するかどうかを調べた。薬剤にはメトホルミン (Met) とシスプラチン (CDDP) を用いた。 MIAPaCa2細胞における細胞生存を評価した結果、2DG+Metによる細胞死はNACあるいは糖質Aのいずれの共投与によっても抑制された。一方、2DG+CDDPによる細胞死はNACによってのみ抑制され、糖質Aでは抑制されなかった。このことより、MIAPaCa2細胞において2DG+Metの細胞毒性はROS(酸化ストレス)と蛋白質N型糖鎖修飾抑制の複合型であることがわかった。これは報告した研究内容と矛盾が無い (Ishino K et al, 2018, BBRC)。2DG+CDDPの細胞毒性はROSが一部関わっているが、N型糖鎖修飾は全く関わっていない可能性が考えられた。 また、A549細胞における細胞生存の評価では、2DG+Metによる細胞死はNACでは抑制されなかったが、糖質Aによりわずかにレスキューされた。一方で、2DG+CDDPによる細胞死は、NACあるいは糖質Aのいずれの投与でも抑制されなかった。また興味深いことに、A549細胞においてNACによる細胞毒性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異なる臓器由来のがん細胞株に2DGと抗がん剤の組合せで処理し、ROSあるいは酸化ストレスによる細胞毒性かどうかを抗酸化物質NACを用いて検証することは、当初の予定通りに進展した。その一方で、当初計画では平成30年度中に細胞内抗酸化代謝物やROSの生成量を調べる予定だったが、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2DGと抗がん剤など薬剤の組合せによる細胞毒性は、MIAPaCa2とA549で異なる機序で生じることが示唆された。この理由として、2DGやNACなどの取込み量に依る可能性が考えられたが、現状で説明する手段が無いため、細胞内の抗酸化代謝物量や解糖系活性、ミトコンドリア呼吸を測定し間接的に毒性発現メカニズムの解析を行う必要がある。 計画にあるxenograftモデルを用いた検討を進める予定で、これにより生体におけるがん代謝制御によるがんの縮小効果が認められるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究進捗が当初の予定より遅れているため。平成31年度は細胞内の抗酸化代謝物・ROSの測定やxenograftマウスモデルによる生体での2DGと薬剤の二剤投与を実施し、研究成果の論文化を進める予定である。
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Research Products
(11 results)