2017 Fiscal Year Research-status Report
蛍光1粒子イメージングによるHERファミリー2量体検出と抗がん剤薬効予測
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17K15767
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北村 成史 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50624912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HERファミリー / ヘテロ二量体 / 蛍光1粒子イメージング / 乳がん / FRET |
Outline of Annual Research Achievements |
<培養細胞を用いたタンパク質の定量> 申請者らが開発した蛍光1粒子イメージング装置の技術を用い、まず培養細胞を用いた検討を行った。HER2、HER3の発現量の異なる乳がん細胞株を用いた切片を作製し、免疫染色法により蛍光ナノ粒子で標識し、蛍光1粒子イメージングでHER2、HER3の局在や発現量の定量を行った。 <蛍光エネルギー移動を利用した二量体形成量の定量評価> また、申請者はHER2/HER3ヘテロ二量体のタンパク質間距離に注目し、蛍光ナノ粒子間のFRET現象を利用して二量体の検出を試みた。585 nmに鋭い蛍光を示す量子ドット(以下、QD)と、先行研究で開発した有機蛍光ナノ粒子 (吸収波長582 nm、蛍光波長626 nm、以下PID) の2種類の粒子を用い、それぞれをFRETのドナーとアクセプターとして利用する。HER2、HER3をそれぞれの特異的抗体で標識した後、抗体と結合性を持つQDでHER2を、同様にPIDでHER3を標識したHER2/HER3がヘテロ二量体を形成して蛍光粒子同士がごく近傍に存在する場合のみ、FRET由来の蛍光が検出可能という原理であり、実際に共局在している部位でのエネルギー移動現象を確認することができた。さらに、培養細胞にHER2標的抗体医薬を作用させ、膜タンパク質の局在の変化や、二量体の形成への影響を評価した。 <ペルツズマブを用いた二量体形成阻害実験> ペルツズマブの効果の評価については、未だ十分な信頼性のあるデータは得られていないが、概ねダイマー形成の阻害効果を示唆する傾向が見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定していた培養細胞を用いた検討において、定量性のある評価を行うことができており、本手法の有効性を確認できている。また、研究の遂行にあたって蛍光ナノ粒子の改良を進めており、こちらについても安定的に検出することを実現した。 また、HER2/HER3ヘテロ二量体の検出においては、事前に予測していなかったが検出に有利に働く可能性のある特徴的な蛍光特性を観測しており、こちらについては鋭意調査中である。 得られた結果については、学会での発表においても高評価を獲得しており、本手法が注目され始めている。 ペルツズマブの効果の評価については、当初予定よりはやや遅れているが、こちらについても事前の想定の範囲内であり、上記の現象の解明と並行して、実験のペースを上げることで対応可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
<動物実験での評価> 次の段階として、より実際のがん組織に近い環境での検討を行う。具体的には、種々の乳がん細胞株を免疫不全マウスの皮下に注入し、腫瘍モデルを作製する。形成される腫瘍の内部では、がん細胞同士がスフェロイドと同様の三次元の構造体を形成するだけでなく、新生血管が誘導され、間質などが形成される。形成された腫瘍組織を摘出し、ホルマリン固定ののち、薄切切片を作製する。培養細胞や細胞スフェロイドと同様の手法で免疫染色を行い、蛍光1粒子イメージング観察を行ってHER2、HER3、脂質ラフト内外の膜タンパク質の局在やHER2/HER3ヘテロ二量体の形成量の定量を行い、(1)、(2)の知見を元に治療効果予測を行う。 <抗体治療の効果予測> 次に、同じ細胞株を移植した担癌マウスについて、腫瘍摘出前に抗体医薬を投与し、がんの縮小や体重の増減、転移の有無などの評価を統合して、その奏功性を数値化する。転移の有無については、in vivo蛍光イメージングと造影剤CTでがん細胞を追跡し、評価を行う。また、同様に腫瘍を摘出して薄切切片を作製し、抗体医薬を認識する抗ヒトIgGを利用して組織切片上のどこにどれだけ抗体医薬が到達し、どのがん細胞のどこに結合しているかについても、蛍光1粒子解析で定量、数値化する。この解析で得られた結果についても、奏効率のデータとの相関性を評価して、効果予測法へフィードバックする。 <病理検体への応用> 東北大学病院のHER2標的抗体医薬適用乳がん患者の病理標本 (針生検・手術標本) を用いて、本手法で免疫染色を行い、解析結果と奏効率の相関関係を解析し、カットオフ値の検討を行う。解析データを統合し、膜タンパク質の分布や相互作用の高感度定量技術を、実際のHER2陽性乳癌患者におけるHERファミリータンパク質を標的とした分子抗体医薬の治療効果予測の因子として確立させる。
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Research Products
(3 results)