2017 Fiscal Year Research-status Report
組織特異的ノックアウトマウスを用いた糖鎖修飾酵素OGTの尿細管における機能の解明
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17K16094
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
南 悠季子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30793880)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミネラルコルチコイド受容体(MR) / O-GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT) / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの当教室における研究において、核内受容体の1つであるMR(mineralocorticoid receptor)が活性化を受ける分子機序について様々な角度から解明を進めてきたが、その中で糖鎖修飾の1つであるO-GlcNAc修飾を担う酵素OGT(O-GlcNAc transferase)がMRと強く結合し、MRの糖鎖修飾を介してその機能の調節をしていることを見出し、かつ、主なMR発現臓器である腎臓において、OGTが尿細管に広範囲に発現していることを確認した。これまで腎尿細管におけるOGTの機能を検討した報告はなく、本研究では、OGT-floxマウスと腎尿細管特異的にCreを発現するKsp1-Creマウスを交配させ、腎尿細管特異的OGT欠損マウス(KspOGT-KO)を作成し、その表現型解析を行った。これまでの検討ですでにいくつかの表現型が確認されており、KspOGT-KOは、著明な多尿を呈すること、それに伴い高アルドステロン血症を呈すること、腎嚢胞形成を伴いCrが上昇することを見出した。さらに、表現型が固定した20週齢でKspOGT-KOおよびControlマウスから腎組織を摘出し、上記表現型の分子機序の検討を行った。まず、腎組織におけるOGTの発現は40%低下していることが確認された(p=0.012)。上述のとおり、これまでのin vitroの検討では、OGTはMR活性を増強する因子であり、KspOGT-KOでは腎組織におけるMR活性が低下していることが予想された。そこでMR標的遺伝子として知られているSgk1およびENaCαのmRNA発現を検討したところ、Sgk1は16%の発現低下を認めるものの有意ではなく(p=0.125)、一方、ENaCαは38%と有意な発現の低下を認めた(p=0.023)。KspOGT-KOが多尿による脱水のため著明な高アルドステロン血症を呈している(KspOGT-KO: 2688±2284 pg/ml, Control: 448±88 pg/ml, p<0.05)を考慮すると、OGTの発現低下により、腎MRの感受性が低下していることが示唆され、我々のin vitroの研究結果を支持するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの作出に成功しており、またOGTの発現評価から本モデルマウスが研究目的に適切であることが確認できている。本モデルマウスの表現型解析では、我々がすでに有しているin vitroの検討結果と整合性のあるデータが出ており、研究計画は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、KspOGT-KOの表現型である多尿および腎嚢胞形成の分子機序を明らかにするべくさらに検討を進めて行く。上述のとおり、KspOGT-KOでは、高アルドステロン血症を呈するにもかかわらず腎組織におけるMR活性が低下しており、MRを介した臓器障害の観点からは腎嚢胞形成による腎機能障害(Cr上昇)を説明するのは困難と考えている。MR活性と独立した機序を介している可能性を含め、広く検討することを考えている。本モデルマウスの解析を通じて、OGTの腎における幅広い機能が明らかになった場合は、以前の我々の検討課題でもあった腎尿細管特異的OGT過剰発現マウス(KspOGT-Tg)の表現型についても、改めて見直しを行い、OGTの腎における生理機能の全貌を明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究は、当教室の研究の流れの中で行っている研究であり、H29年度の前半は、効率的に研究資金を運用することができたため、次年度に余剰金を回すことに成功した。上述のとおり、上記モデルマウスの表現型解析においては、当初予定していたMR機能という観点からより広い観点での分子機序の解明が必要であることが判明し、H30年度はより多くの研究資金が必要となることが予想されるため、資金使用計画としては非常に合理的な配分で行うことができたと考えている。
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