2017 Fiscal Year Research-status Report
クロザピンの薬効・副作用に関わる標的分子の探索と機能解析-基礎と臨床の連携研究-
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17K16403
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
吉見 陽 名城大学, 薬学部, 助教 (00637671)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロザピン / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
クロザピンによる効果と副作用を評価するための検体作製と解析条件を最適化するための調製方法の検討を実施した。クロザピンの代表的な副作用である血液毒性に関わる分子を同定するために、ヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60細胞)にクロザピンと対照薬を添加して解析検体の調製条件を検討した。HL-60細胞にATRA(1 uM)を添加して120時間培養することで顆粒球様細胞へ分化誘導し、クロザピン(1~100 uM)、オランザピン(1~100 uM)、ドキソルビシン(0.2 uM)を添加して48、120時間後の細胞生存率に与える影響(副作用である血液毒性)を評価した。動物個体におけるクロザピンの影響を検討するために、6~10週齢のマウス(C57BL/6J、Jcl:ICR)よりクロザピンの効果発現の標的部位である脳を採取し、DNA、total RNA、タンパク質を抽出して網羅的解析に適用可能なサンプルの調製条件を検討した。 クロザピン(50、100 uM)、ドキソルビシン(0.2 uM)は薬物非暴露群と比較して、細胞生存率を有意に低下させたが、オランザピンでは細胞生存率の低下は認められなかった。クロザピンにより細胞毒性やその他の副作用特性を示す濃度を確定して、その条件下において影響を及ぼす分子を同定していく。マウス脳検体よりAllPrep DNA/RNA/Protein Mini Kit(キアゲン社)にてDNA、total RNA、タンパク質を、超音波破砕法にてタンパク質を抽出した。DNAとtotal RNAはシーケンシングやマイクロアレイ解析に適応可能であることを確認した。タンパク質はキットと超音波破砕法との間で質量分析により同定されるタンパク質プロファイルに差はないことを確認した。 今後、クロザピン結合ビーズの調製とクロザピン添加・投与による細胞・組織への分子遺伝学的影響について解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質量分析の最適化のため、タンパク質抽出、精製、酵素消化、クリーンアップ、分析条件の検討を検体種毎に実施する必要があり、条件検討に時間を要している。標的臓器である脳組織については二段階消化法により定性・定量分析が可能であること、培養細胞については界面活性剤の比較検討によりの質量分析が可能であることを確認し、確立した条件にてクロザピン処理した検体作製とその解析を実施していく。 クロザピン結合ビーズ調製においては液体クロマトグラフィーによる結合状態の確認ができず、グラジエントの条件を検討している。クロザピンに直接結合ができない場合に誘導体からの調製を確認する必要がある。効率的な調製ができない場合には、当初の代替計画のようにマイクロアレイや質量分析により、クロザピンにより影響を受ける遺伝子・分子群を同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.クロザピン結合ビーズ調製:クロザピンまたはその誘導体を磁性ビーズに結合させて回収し、その収量を液体クロマトグラフィーにより確認する。細胞株、動物組織のライセートを調整して反応させ、質量分析により結合分子を同定する。 2.クロザピンにより効果あるいは副作用を呈する用量において、細胞株、動物組織の遺伝子・タンパク質発現変化を網羅的に解析して、検体横断的に共通・特異的な候補分子を同定する。 3.クロザピンが影響を及ぼす分子ネットワークをin silico解析により明らかにし、統合失調症の分子病態解明と診断・治療法の開発に繋がりうる知見をまとめる。
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Causes of Carryover |
クロザピンと磁性ビーズ調製を行い、その結合率を測定するために液体クロマトグラフィーを実施している。送液ポンプとグラジエントシステムが機能せず、次年度に条件検討のための試薬・消耗品類が必要となることから、次年度使用額が生じた。申請当初の計画通り磁性ビーズ調製とその確認のために必要な試薬・消耗品類(バッファー調製、磁性ビーズ、精製フィルタ等)に使用する。
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Research Products
(8 results)