2018 Fiscal Year Research-status Report
クロザピンの薬効・副作用に関わる標的分子の探索と機能解析-基礎と臨床の連携研究-
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17K16403
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
吉見 陽 名城大学, 薬学部, 助教 (00637671)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロザピン / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
クロザピンによる効果と副作用を評価するための検体作製と解析条件を最適化するための調製方法の検討を実施した。動物個体におけるクロザピンの影響を検討するために、6~10週齢のマウス(C57BL/6J、Jcl:ICR)に統合失調症様行動障害を惹起するフェンシクリジン(PCP)10 mg/kgまたは生理食塩液(SAL)を14日間皮下投与し、クロザピン(CLZ)10 mg/kgまたは溶媒(Veh)を経口投与した。マウスより脳(前頭前皮質、側坐核、線条体、扁桃体、海馬)および末梢組織・臓器(血液、脂肪、肝臓、膵臓、胆嚢、心臓、膵臓)を採取し、検体とした。 前頭前皮質、側坐核、線条体、扁桃体、海馬よりDNA、total RNA、タンパク質を抽出・精製し、前頭前皮質のtotal RNAはDNAマイクロアレイ解析、タンパク質は質量分析により網羅的発現解析を実施した。DNAマイクロアレイ解析において、PCP投与マウスの前頭前皮質では中枢神経機能や遺伝子発現・エピジェネティック制御に関連する遺伝子の発現変化が認められた。質量分析において、PCP/Veh群、SAL/CLZ 10 mg群、およびPCP/CLZ 10 mg群では、それぞれ292、312、および335のタンパク質について有意な発現変化が認められ、シナプス小胞サイクル、グルタミン酸作動性シナプス、神経変性疾患、代謝経路)などのパスウェイについて有意な関連が認められた。今後、網羅的発現解析結果のデータマイニングを行い、リアルタイムPCR・ウエスタンブロッティングによる発現変化の再確認を行う予定である。 一方、クロザピン結合ビーズの調製を実施し、精製時に遊離するN-ヒドロキシスクシンイミドを高速液体クロマトグラフィーにより定量した。今後、脳ライセートを磁気ビーズと反応させて結合タンパク質を同定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質量分析の最適化のため、タンパク質抽出、精製、酵素消化、クリーンアップ、分析条件の検討を検体種毎に実施する必要があり、条件検討に時間を要していた。標的臓器である脳組織については二段階消化法、限外濾過膜によるタンパク質精製を行うことにより定性・定量分析が可能となった。確立したサンプル抽出・精製条件を用いて、クロザピン(CLZ)処理した検体作製とその解析を実施していく。CLZ結合ビーズ調製においては高速液体クロマトグラフィーによるビーズ結合状態の確認が可能となり、ライセートを用いたCLZ結合タンパク質の同定を検討している。ビーズの安定性が悪くライセート中のタンパク質を補足できない場合には、CLZ誘導体によるビーズ調製を実施するなどの対応が必要となる。効率的な調製ができない場合には、現在進めているマイクロアレイや質量分析により、クロザピンにより影響を受ける遺伝子・分子群を同定する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.クロザピン結合ビーズ調製:引き続きクロザピンまたはその誘導体を磁性ビーズに結合させて回収し、その収量を液体クロマトグラフィーにより確認する。細胞株、動物組織のライセートを調整して反応させ、質量分析により結合分子を同定する。 2.クロザピンにより効果あるいは副作用を呈する用量において、遺伝子・タンパク質発現変化を網羅的に解析し、検体横断的に共通・特異的な候補分子を同定する。 3.クロザピンが影響を及ぼす分子ネットワークをin silico解析により明らかにし、統合失調症の分子病態解明と診断・治療法の開発に繋がりうる知見をまとめる。
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Causes of Carryover |
今年度はクロザピン磁性ビーズ調製とその結合率の測定および脳検体の質量分析の条件検討を進め、網羅的発現解析のデータの取得に専念した。そのため、次年度にこれまでの検討部位と異なる検体種の質量分析条件検討に使用する試薬・消耗品類(バッファー調製、磁性ビーズ、精製フィルタ等)、同定された分子の機能解析に必要となる試薬・消耗品類(抗体、蛍光プローブ、レンズ、蛍光キューブ等)が生じた。
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Remarks |
平成31年4月22日にプレスリリースを配信した。 https://www.amed.go.jp/news/release_20190422.html
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Research Products
(14 results)