2017 Fiscal Year Research-status Report
難治性前立腺癌におけるMUC1を中心としたシグナル伝達の制御による新規治療戦略
Project/Area Number |
17K16814
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長谷川 政徳 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50383823)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | MUC1C蛋白 / 去勢抵抗性前立腺癌 / フェロプトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
去勢抵抗性前立腺癌に対する標準治療はドセタキセル(DTX)が中心であるが、治療の過程で抗癌剤に抵抗性を獲得するもののその抗癌剤耐性機序に関しては未だ深く考察されていない。近年、膜結合型ムチン1型C末端ペプチド(MUC1C)が癌増殖能を促進する癌蛋白であること、さらには抗癌剤耐性機序に関与する事が報告されている。本研究は、去勢抵抗性前立腺癌細胞に対し、MUC1C蛋白の作用機序を解明し、新規治療戦略を確立させることを目的とした。 我々は、去勢抵抗性前立腺細胞株C4-2、そして当院で樹立したDTX抵抗性前立腺癌細胞株のC4-2AT6の2種類の細胞株を使用し、q-PCR法及びWestern Blotting法を用いてMUC1Cの発現を確認した。またDTXの殺細胞効果の確認にはWST1-assay法を用いてcell viabilityを測定した。さらに、GPX4阻害剤であるML210、RSL3を使用し抗癌剤耐性獲得後のferroptosisの変化について確認を行った。 MUC1Cは、mRNAレベル、蛋白レベル共に抗癌剤抵抗性株のC4-2AT6で有意に亢進を認めていた。MUC1Cの発現上昇に伴い、PI3K/AKT経路、およびアンドロゲン受容体(Androgen Receptor: AR)発現の亢進を確認した。siRNAを用いてMUC1Cをknock downしたところ、p-AKT、ARの明らかな発現低下を認め、MUC1Cと細胞増殖能との関与が示唆された。抗癌剤耐性株でMUC1CをknockdownしDTXを投与すると有意にDTX感受性の増強を認め、かつGPX4阻害剤が耐性株においてのみ著明な殺細胞効果を認めたことから、MUC1CがGPX4を介した薬剤耐性機構に関与することが示唆された。MUC1Cの制御が抗癌剤耐性去勢抵抗性前立腺癌の治療標的になることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、去勢抵抗性前立腺癌に対し、MUC1C蛋白の発現確認、およびMUC1C蛋白がドセタキセル抵抗性の一端を担っている事を確認した。また、去勢抵抗性前立腺癌におけるフェロプトーシスがMUC1CとGPX4を介して抑えられていることを確認した。今後はvivoにおけるMUC1C蛋白とドセタキセルによる抗腫瘍効果につきづ物実験を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)MUC1C阻害剤使用によるドセタキセル感受性効果確認 MUC1CをknockdownしたC4-2AT6にDTXを投与したところ、DTXの殺細胞効果が濃度依存性に増強されることを確認した。よって、現在所有しているMUC1阻害剤を用いて今後knock down時と同様の現象を標的蛋白において確認する予定である。 2)GPX4阻害剤による抗癌剤耐性株でのフェロプトーシスの確認 さらに、GPX4阻害剤であるRSL3、ML210をそれぞれの細胞株に投与すると、薬剤感受性細胞株であるC4-2においては殺細胞効果を認めなかった一方で、薬剤抵抗性株であるC4-2AT6においては著明な殺細胞効果を認めることが分かった。この結果から、抗癌剤耐性を獲得した前立腺癌細胞では発現亢進したMUC1Cがferroptosisからの防御機構を備えていることが示唆されたため、今後、MUC1CにおけるGPX4を介した抗癌剤耐性機序を解明する予定である。
|