2017 Fiscal Year Research-status Report
肥満コントロールのための褐色脂肪細胞分子メカニズム解明研究
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17K17254
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大植 香菜 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (60760329)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / エネルギー代謝 / UCP1 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
PRIP(PLC-related catalytically inactive protein)は、Ins(1,4,5)P3結合性タンパク質として発見された分子で、タンパク質脱リン酸化酵素であるプロテインホスファターゼと複合体を形成し細胞機能を調節している。PRIP遺伝子欠損マウス(Prip-KOマウス)は、野生型と比較して白色脂肪組織で脂肪分解亢進が起こっており、褐色脂肪組織では、熱産生関連タンパク質であるUCP1の発現が亢進し高いエネルギー消費により耐肥満性を示した。平成29年度の研究において、Prip-KOマウスが寒冷刺激時に野生型と比較して体温が高く、褐色脂肪組織でのUCP1タンパク質発現が亢進しており、さらに皮下白色脂肪組織においてもUCP1タンパク質の発現を認め、野生型と比較して発現が亢進していることを学会で発表(日本薬理学会近畿部会、2017)し、論文で報告(JOB, 2017)した。また、マウスより褐色脂肪組織を摘出し、脂肪前駆細胞を分離培養して分化誘導をかけ初代培養褐色脂肪細胞を調整し、アドレナリン刺激反応を解析した。野生型と比較してPrip-KOマウスの初代培養褐色脂肪細胞でアドレナリンβ受容体刺激によりUCP1や熱産生関連遺伝子の発現が有意に増加した。また、脂肪分解に必要なhormone-sensitive lipase (HSL)やペリリピンなどのアドレナリン刺激によるリン酸化は、野生型と比較してPrip-KOマウスの初代培養褐色脂肪細胞で上昇しており、細胞内の脂肪滴分解の亢進が起きていた。以上より、Prip-KOマウスの褐色脂肪細胞では、アドレナリン刺激によりUCP1の発現増加と細胞内脂肪滴の分解亢進に伴うUCP1の活性化が起こり、非ふるえ熱産生によるエネルギー消費の亢進が起きていることが明らかとなり、学会で発表(歯科基礎医学会、2017)した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
褐色脂肪細胞におけるPRIPが仲介するエネルギー代謝亢進の分子基盤を解明するために、Prip-KOマウスや野生型マウスより初代培養褐色脂肪細胞を調整し実験を行ってきたが、初代培養褐色脂肪細胞の調整がうまくいかなくなり、その原因究明に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
初代培養褐色脂肪細胞を用いて、褐色脂肪細胞のPRIPが関与するUCP1転写調節機構のさらなる分子メカニズムの解明を行う。 褐色脂肪細胞のUCP1の発現調節には、PKAによるCREBやp38-MAPKのリン酸化が関与する事が知られる。PRIPとprotein phosphatase複合体は、HSLやperilipinの脱リン酸化を制御したが、CREBやp38-MAPKの脱リン酸化を調節しているかは不明である。そこで、PRIPとこれら分子との関係を明らかにする。初代培養褐色脂肪細胞を用いて、アドレナリンβ受容体(あるいは、アデニル酸シクラーゼ活性化薬:フォルスコリン)刺激によるCREBやp38-MAPKのリン酸化の違いをリン酸化認識抗体を用いて野性型と比較して行う。また、その下流で働くUCP1の転写因子(Atf2やPGC1α)のリン酸化レベルも比較検討する。 さらに、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化、成熟にはインスリンシグナルを介したPI(3,4,5)P3 関連経路(PI3K/Aktのリン酸化経路)が関与しているが、PRIP分子機能解明の他の研究において、PRIPが細胞膜PI(3,4,5)P3 の調節タンパク質であり、PI(3,4,5)P3 依存的な細胞移動やAkt 経路のシグナリングを制御していることが見出された。そのため、脂肪細胞の分化、成熟の過程においてもPRIPが何らかの役割を担っているものと考えられるので、その分子調節機構についても明らかにしていく。 初代培養褐色脂肪細胞がうまく調整できない場合は、脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞株を用いてPRIP遺伝子をノックダウンしたもの調整する、またはPrip-KOマウスのマウス胚線維芽細胞を用いる代替手段などを考慮する。
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Causes of Carryover |
当年度購入した実験試薬や設備にかかった費用が、当初の見積額よりも少なく、また、動物飼育費の自己負担がなかったため、次年度使用額が生じた。 生じた次年度使用額に関しては、次年度の動物飼育費や実験試薬購入などにあてる予定である。
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Research Products
(5 results)