2018 Fiscal Year Research-status Report
免疫機構に着目したDown症患者の歯周疾患の基礎的解析および治療法の開発
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17K17332
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
赤澤 友基 徳島大学, 病院, 助教 (10646152)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯肉線維芽細胞 / Down症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児歯科診療では、日々様々な疾患や障害に遭遇する。その中でも、Down症候群は高頻度に遭遇する症候群であり、疫学的にも遺伝疾患及び染色体異常の中では最も発生頻度が高い。原因としては、体細胞の21番染色体が通常より1本多く存在し、3本になることで発症する。歯科的な臨床像としては、齲蝕の罹患率は低いが、歯周疾患への罹患率は高いことが知られている。しかし、Down症候群において歯周疾患に罹患しやすいことに対する分子メカニズムは、未だ不明である。そこで申請者らは21番染色体に乗る遺伝子の強発現が、歯周疾患に関与している可能性の解析を行ってきた。つまり、Down症候群での歯周疾患の発症には、21番染色体遺伝子にコードされたサイトカインによるサイトカインネットワークが関与しているのではないかと考え解析を行ってきている。 Eotaxin-1(CCL11)は、好酸球およびレセプターCCR3を発現する Th2細胞の遊走を誘導する。好酸球自身は局所を酸性にし、またTh2細胞は炎症性サイトカインの産生の誘導、B細胞の遊走を誘導し、ともに局所の炎症の憎悪を誘導することが予想される。すなわち複数のステップを介して炎症に介入すると考えられる。そこで我々はヒト歯肉細胞におけるEotaxin-1の産生を検討し、歯肉細胞でEotaxin-1が恒常的に発現していることを確認した。Eotaxin-1による炎症制御機構が存在すると予想した。 そこで、歯周疾患に罹患しやすいDown症候群由来の歯肉細胞と健全歯肉由来の細胞を比較することにより、Eotaxin-1に着目したDown症候群由来の歯肉細胞での免疫機構の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ダウン症歯肉細胞を供与いただき、hTERTを遺伝子導入して不死化細胞株の作成を行っている。しかし安定的hTERT発現細胞の作成にかなり時間がかかっている。H29年度は、研究に使用するサンプル(Down症候群歯肉由来線維芽細胞不死化細胞株)の樹立を試みた。H30年度は作成した細胞株について、Down症候群由来であることを証明するために、遺伝子検査を行った。遺伝子検査を行ったサンプルは4倍体であり、細胞株の作成は失敗であった。ヒト細胞株において、細胞周期調節因子や紡錘体タンパク質に変異が起こると染色体分離が正しく起こらなくなり、4倍体が生じることが知られている。また、細胞の老化の過程において、細胞分裂期のG2期に分裂が回避された結果として,老化細胞は4倍体のG1期細胞となることも明らかにされている。今回のDown症候群の細胞株もこれらの理由で4倍体となった可能性が高いと考えられた。 したがって、再度サンプル作成を行った。今回はsingle cell cloningを行い、6つの細胞株を樹立した。また、Down症候群由来の細胞であることを確認するために、21番染色体上にあるDyrk1A(dual-specificity tyrosine-(Y)-phosphorylation-regulated kinase 1A)のDNA量をreal time PCRを用いて測定した。Dyrk1Aは、脳の発達と機能に不可欠のセリン/スレオニンキナーゼであり、この酵素の過剰活性化はダウン症候群の病因の1つであると考えられている。 また、昨年度死滅した健常歯肉細胞についても再度再細胞株の樹立行い、こちらは安定的hTERT発現細胞の不死化細胞株作成を完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は再度作成したサンプルの染色体検査を行い、細胞株を早期に樹立する。樹立した細胞株と昨年度作成に成功した健常歯肉細胞株を用いて以下の研究を行う予定としている。 健常人の歯肉細胞でEotaxin-1は強発現していることがわかっている。Down症候群由来の歯肉細胞株でも同様の検討を行い、Eotaxin-1の発現を検討する。これを健常歯肉由来の歯肉細胞と比較し、21番染色体上にあるサイトカインとEotaxin-1との関係を検討する。また、歯髄細胞ではFGF-2投与によってEotaxin-1の発現が抑制されたが、歯肉細胞ではFGF-2による抑制効果が弱かった。このことから歯肉細胞にはEotaxin-1を強発現するメカニズムが存在するのではないかと予想された。そこでFGF-2を投与した歯髄細胞と歯肉細胞での遺伝子発現の比較を行い、関与する遺伝子の同定を予定している。候補遺伝子の阻害剤やsiRNA、中和抗体の使用によって解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ダウン症歯肉細胞の供与を日大松戸歯学部障碍者歯科学講座の田中陽子先生から供与を受け、hTERT導入による不死化細胞株の作成を行っている。しかし安定的hTERT発現細胞の作成に時間がかかり、解析が遅れてしまっている。一度作成したものの、核型解析により、失敗が判明したため、再度作成し、single cell cloningを行い、安定した先棒株を作成している。この細胞株のダウン症歯肉細胞の確定を行うために、遺伝子の核型解析を行う再度行う予定である。
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Research Products
(1 results)