2017 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児に対するレジリエントな支援体制の構築-本人と家族を中心として
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17K17496
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
鈴木 浩太 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部, 科研費研究員 (20637673)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族支援 / レジリエンス / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害児、養育者、家族は、困難を抱えているが、その多くは良好に適応している。困難な状況にもかかわらず、良好に適応する過程は、レジリエンスと定義される。発達障害児に関わるレジリエンスの要素を明らかにすることは、臨床上重要なことであると考えられる。本研究体制で、養育者に焦点を当てて、レジリエンスの要素を明らかにしてきた。本研究では、本人、家族のレジリエンスの要素を明らかにすることを目的とした。平成29年度、先行研究を参考にして、家族レジリエンス要素質問票(Family Resilience Elements Questionnaire: FREQ)を開発した。家族レジリエンスは、「破壊的な人生の挑戦に家族が耐え、跳ね返し、より強まり、資源豊かになる過程」と定義される概念である。発達障害児をもつ養育者313名を対象にして、FREQを用いた調査を実施した。FREQ、子どもの問題行動、FREQと子どもの問題行動の交互作用項で、養育者の精神的健康度を予測する階層的重回帰分析を行った。その結果、家族レジリエンスの要素が少ない家族では、発達障害児の問題行動が多い場合に、養育者の精神的健康度が低下する一方で、家族レジリエンスの要素が豊富にある家族では、発達障害児の問題行動が多くても、養育者の精神的健康度は保持されることが明らかになった。つまり、発達障害の臨床では、発達障害児本人、養育者だけでなく、家族をレジリエントにする介入も重要であることが示された。また、成人を対象にして、発達障害特性とレジリエンスの要素の関係性を明らかにするための調査を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、発達障害児をもつ養育者を対象にして調査を実施し、発達障害児をもつ家族のレジリエンスの要素を明らかにした。発達障害児本人を対象にした調査は、目標のサンプル数に到達していないものの、今後、到達する見込みがあり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、成人を対象にした調査を実施し、発達障害児本人のレジリエンスの要素を明らかにする。また、これまで、実施した調査から、コミュニティに関わる要素に焦点を当てた分析を行う。家族レジリエンス、養育レジリエンス、本人のレジリエンスの関係性を明らかにする。また、思考法、性格、環境面の特徴に加えて、認知的な特徴も発達障害児本人のレジリエンスの要素に含まれることも想定される。特に、発達障害児は、個人内の認知能力間でかい離が生じていることも多いので、重要な視点となり得る。これまで、研究代表者らは、難しい課題への対応方法や失敗の対処方法に関わる認知神経学的メカニズムについても検討してきた。この認知神経学的メカニズムがレジリエンスに関係することが想定されるので、検討していく。以上の研究の結果をまとめて、発達障害児本人、養育者、家族が良好に適応できる支援体制を提案する。
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Causes of Carryover |
デジタル脳波計の購入を予定していたが、予備的な検討を行っていたため、当該年度は購入しなかった。
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Research Products
(12 results)