2018 Fiscal Year Research-status Report
The Disaster Recovery and Adaptation in the Small Aral Sea Region on the Basis of Sustainable Human-Environment Relationship
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17K17563
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
地田 徹朗 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 准教授 (10612012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域研究 / 中央アジア / アラル海 / 開発と環境 / 内水面漁業 / 牧畜業 / 災害復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度に引きつづきアラル海救済策・災害被害緩和策について文献・聞き取り調査を進展させ、小アラル海地域の社会・経済状況について漁業・魚肉加工業と牧畜業双方の側面からフォローアップ調査を行った。また、今後の小アラル海地域での持続可能な環境・社会・経済のあり方についても、現地関係者との議論を開始している。 5月、日本沙漠学会第29回学術大会にて、小アラル海地域が「災害復興」と言い得るフェーズはすでに通過し、「持続可能性」フェーズへと移行していることを趣旨とする研究報告を行った(ニコライ・アラディン、タルガルバイ・コヌスバエフとの共著)。同月、『現代中央アジア』(日本評論社刊)所収のアラル海救済策を含む中央アジア諸国の環境政策に関する論考が刊行された。6月、『生態人類学会ニューズレター』に、アラル海災害前後での小アラル海住民の生業の変化と災害状況への住民の適応について、地域での漁業と牧畜業との関係性を踏まえた論考を投稿し、12月に刊行された。8-9月、カザフ=ドイツ大学と合同で、シルダリヤ川及びアムダリヤ川流域での社会・経済状況や国際支援の現状について、中央アジア4カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)の巡検調査を実施した(別財源)。それに引きつづき、小アラル海地域での牧畜業を中心とする社会・経済状況についてフォローアップ調査を実施した(別財源)。そして、現地調査と並行しつつ『地理・地図資料』誌にアラル海地域の環境・社会・経済について一般向け論考を執筆し、11月に刊行された。3月、他財源支弁で、小アラル海地域での漁業の復興と今後の課題について現地調査を行い、小アラル海地域の持続可能な環境・社会・経済のあり方について現地関係者と意見交換を行った(別財源)。これ以外にも、複数の関連する学会・研究会報告を行い、一次・二次文献の収集・分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に研究計画調書に記載した、「アラル海救済策・災害被害緩和策の整理」については順調に調査が進んでいる。「アラル海災害への地域社会の適応と災害復興の通時的検討」についても、牧畜業を中心に、小アラル海地域住民による災害状況への生業的な適応についてかなり明らかになり、災害緩和策とも関連づけることができている。そして、「小アラル海地域の持続可能な環境・社会・経済のあり方の模索」についても現地関係者と議論を始めており、この点では当初の計画以上の成果が出つつあると判断できる。ただし、「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」について、調査内容が文献収集・分析に留まっており、聞き取り調査が必要である。以上から、個別的な課題を抱えつつも、全体的には「おおむね順調に進展している」と自己評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年/令和元年度は、本研究課題も最終年度であり、研究成果公表と論文の執筆を重点的に行うと共に、やや遅れている「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」について文献調査と国内での聞き取り調査を重点的に実施したい。 まず、6月にアラル海災害とそこからの復興について通時的にまとめる論文の執筆を行う。また、同月、イギリス・エクセターで開催される、欧州中央アジア学会第14回大会にて、小アラル海地域の災害復興とレジリエンスの観点からの研究報告を行う。そして、夏期には国内出張を数回行い、これまでアラル海災害問題にかかわってきた国内の研究者から聞き取りを行う。秋には、共同研究者であるタルガルバイ・コヌスバエフを日本に招聘し、合同で研究セミナーを組織し、研究成果の社会への還元を行う。そして、「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」については別途、研究ノートの執筆を行う。 これまでの本研究の成果に基づいて、その内容をさらに発展させる形で秋には新たな科研費課題の申請を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、本科研費支弁での国外調査を行わず、別経費にて本科研課題と関連する調査研究を実施することができた。また、前述した本科研申請時の研究内容の一つである「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」について、当初は国内出張を複数回行って聞き取りをする予定だったが、それを実施できなかった。他方で、本研究課題の成果公表と関連する地図作成のデザイン料を本科研費で支出した。以上の理由から、39万円程度の残額が生じた。 平成30年度分の残金は、平成31/令和元年度に、「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」にかかわる国内出張を実施し、また、過去の国外調査で聞き取りをした際のカザフ語での録音データの日本語(あるいはロシア語)への翻訳を依頼するための資金として活用する予定である。
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Research Products
(10 results)