2020 Fiscal Year Research-status Report
The Disaster Recovery and Adaptation in the Small Aral Sea Region on the Basis of Sustainable Human-Environment Relationship
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17K17563
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
地田 徹朗 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 准教授 (10612012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中央アジア / アラル海 / 開発と環境 / 環境政策 / サステイナビリティ / 牧畜業 / 災害復興 / 環境史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、世界的なコロナウイルスの流行に伴い、国内外の調査を行うことができず、カザフスタンの研究協力者の招聘も実現できなかった。そのため、関連文献の収集・読解とこれまでの研究成果の公表を重点的に行い、科研費は関連二次文献や成果公表に関連する消耗品の購入に充てた。4月から5月にかけて、1920年代末のボリシェヴィキ政権による、アラル海地域を含むカザフ牧畜民に対する政策についての論考を完成させ、最終的に8月に刊行された。そこでは、通年の家畜との移動を伴う「遊牧」形態の牧畜が、アラル海地域ではソ連時代になっても残っていったことが明らかになった。そして、ペレストロイカ時代のアラル海をめぐるポリティクスについて、①政策形成を担った実務者、②環境保護派の知識人・文学者、③自然改造推進派の水利技術者集団、④地方の共産党・政府当局者、という4つのアクター間の政治的関係性という視座から、公文書資料からまとめた論考を4月から7月にかけて執筆し、9月に刊行された。そこでは、4つのアクターたちの複雑な絡み合いの中から生まれたアラル海の維持・保全をめぐる将来計画が実施される前にソ連が解体してしまったが、その多くは中央アジア諸国独立後の対策に引き継がれたということが明らかになった。8月から2月にかけて、カザフを含む牧畜の多地域比較についての共編著の編集を行い3月に刊行された。10月から11月にかけて、小アラル海地域での社会経済復興に伴い重点的に営まれるようになったラクダ飼養の特性に関する論考の執筆を行い、3月に刊行された。1月から3月にかけて、アラル海流域でのアクター間関係の変遷を「スケールの政治」概念を用いて明らかにする論考を執筆し、3月に刊行された。3月、カザフスタンの東洋学研究所主催のオンライン国際会議の場でアラル海問題について招待講演を行う機会を得た。その他、複数の研究会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的な蔓延に伴い、国外をフィールドとする本研究課題にとって苦しい一年となった。研究計画書にある、「小アラル海地域の持続可能な環境・社会・経済のあり方の模索」については、現地から研究協力者の招聘を予定して議論することを予定していたが、かなわなかった。また、国内の移動や聞き取りにも制約があり、研究計画書で示していた「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」についての研究は、関連文献の書評の執筆を除き、ほとんど進捗させることができなかった。他方で、国外調査ができなくなったことで、成果公表のための時間をとることができるようになり、「アラル海救済策・災害被害緩和策の整理」、「アラル海災害への地域社会の適応と災害復興の通時的検討」については研究成果の執筆から刊行まで行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画書にある研究内容の中で特に遅れている「我が国によるアラル海災害に対するコミットメントの総括」について引き続き重点的に取り組みたい。また、本研究課題を公の場で総括し、知識の社会還元を図るべく、カザフスタンから研究協力者を日本に短期間招聘し、国内でセミナーを組織し、共同報告等を実施したい(冬期を予定)。ただし、これは新型コルナウイルス禍の状況如何にかかっており、研究計画の変更もあり得る。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウイルスの流行に伴い、国外からの研究協力者の招聘や国内でのインタビュー調査などの実施が不可能になり、次年度に使用額を持ち越すことになった。
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Research Products
(10 results)
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[Book] 牧畜を人文学する2021
Author(s)
シンジルト、地田 徹朗(編著)
Total Pages
251 (66-86)
Publisher
名古屋外国語大学出版会
ISBN
978-4-908523-29-8
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[Book] 沙漠学事典2020
Author(s)
日本沙漠学会編、(地田徹朗ほか分担執筆)
Total Pages
534 (194-195, 394-395)
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4-621-30517-1