2017 Fiscal Year Research-status Report
筋肉の疲労状態を考慮した作業負荷予測が可能なデジタルヒューマンモデルの開発
Project/Area Number |
17K17871
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西田 勇 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40776556)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 筋骨格モデル / 冗長筋 / 筋疲労 / 作業負荷 / 人体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,製造現場において,筋肉の疲労状態を考慮した作業負荷予測が可能なデジタルヒューマンモデルを開発することを目的としている. 本研究では,従来の筋骨格モデルでは考慮されていなかった冗長筋の機能を考慮した筋骨格モデルを提案する.冗長筋とは,関節を駆動する際に駆動方向を妨げる方向に働く筋肉のことであり,冗長筋の影響が考慮できていないと,推定される筋肉負荷は実際より小さく見積もられることが知られている.次に,3次元動作の解析に供する全身の筋肉を含めた筋骨格モデルを構築する.さらに,筋肉の疲労および回復モデルを新たに提案して,時系列に変化する筋肉の状態を考慮した筋肉の機能を評価する. 我が国では2007年に高齢化率が20%を超え,超高齢社会に突入している.また,若年層の製造業者の減少により製造現場での高齢化が大きな問題となっている.製造現場での作業者の高齢化が進むと,作業者の身体的な負担が増えるために作業の安全性や効率が損なわれることになる.本研究では,これらの課題を克服するために,作業者ごとに異なる筋力および疲労進展の程度などの身体特性を考慮して,作業時の筋肉の負荷を予測することが可能なデジタルヒューマンモデルを実現している.本研究成果によって,製造現場での人の作業において,筋肉の負荷の大小を事前に予測でき,負荷が大きい場合には作業条件の見直しや作業者の配置転換を行うことで,作業時の怪我を予防することができる. 現在までに,冗長筋の機能を考慮した筋骨格モデルを新たに提案し,モデルの妥当性を検証した.また,筋肉の遅筋群および速筋群の機能を考慮した筋疲労モデルを新たに提案し,モデルの妥当性を検証した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,作業者ごとに異なる筋力および疲労進展の程度などの身体特性を考慮して,作業時の筋肉の負荷を予測することが可能なデジタルヒューマンモデルを実現することを目的としている.現在までの進捗状況は下記の通りである. ・冗長筋の機能を考慮した筋骨格モデルの新たな提案およびモデルの妥当性の検証:従来の筋骨格モデルでは,人の身体特徴の特徴である冗長筋の機能を考慮していないため,推定される筋力は実際の筋力より小さく見積もられるという問題があった.本研究では,主動方向に作用する筋肉と拮抗方向に作用する筋肉を連結ばねで表現して,一方の筋肉が収縮して筋力を発揮する際に,もう一方の筋肉が定常状態を保とうとすることで収縮する機構をモデルで表現することで,冗長筋の機能を考慮した筋骨格モデルを新たに提案した.表面筋電計を用いた実験を行い,モデルによる予測結果と表面筋電計による測定結果を比較することでモデルの妥当性を検証した. ・筋肉の遅筋群および速筋群の機能を考慮した筋疲労モデルの新たな提案およびモデルの妥当性の検証:従来の筋骨格モデルにおいて,筋肉の疲労の影響を考慮したものは少なく,考慮されていたとしても,筋肉の遅筋群および速筋群の機能を考慮していないため,限られた出力範囲でしか有効ではなかった.本研究では,筋肉の遅筋群および速筋群の機能を考慮した筋疲労モデルを新たに提案した.人の上肢先端にて出力可能な力および時間を実験にて測定し,モデルによる持続可能時間の予測結果と比較することでモデルの妥当性を検証した. 現在までの進捗は概ね計画通りとなっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の実施計画としては,下記の通りである. ・3次元動作に作用する筋群を含めた筋骨格モデルの構築:現在までの進捗として,主動筋と冗長筋の組み合わせが決まれば,提案している冗長筋の機能を考慮した筋骨格モデルによって各筋の筋力を推定することが可能となっている.これまでに上肢の2次元運動に作用する筋群についてはモデルに組み込み,検証を完了している.作業時の筋肉の負荷を予測することが可能なデジタルヒューマンモデルの構築には,上肢の2次元運動に作用する筋群だけでは不十分であり,3次元運動に作用する筋群や下肢に存在する筋群,体幹部の筋群の評価も必要となる.これらの筋群に対して,主動筋と冗長筋の組み合わせを生理学的な知見からモデル化し,モデルの妥当性を検証する. ・休憩を考慮した筋肉の疲労評価:現在までの進捗として,筋肉の遅筋群および速筋群の機能を考慮した筋疲労モデルを提案し,任意の大きさの出力に対して,持続可能時間を予測している.作業時の筋疲労を予測するためには,筋肉が出力を発揮していない休憩状態を考慮する必要がある.筋肉が出力を発揮していない休憩時の疲労回復の程度を予測できるようモデルを改良して,モデルの妥当性を検証する. ・作業負荷および怪我発生率の事前予測:本研究では,産業応用として製造現場における作業動作に適用し,作業負荷や怪我発生率の事前予測を行う.作業動作をキャプチャして,逆動力学計算により各関節の関節トルクを算出する.算出した関節トルクから本提案モデルにより各筋肉の筋力を推定する.その際,各筋肉の最大で発揮できる力は筋肉の疲労により時系列で変化しており,最大で発揮できる筋力と推定した筋力の割合から負荷の程度を予測することができる.予測した負荷の程度から,作業条件の見直しや作業者の配置転換を事前に行うことができる.
|
Causes of Carryover |
当該年度にて表面筋電計を使用可能チャンネル数を限定して購入する予定であったが,次年度の予算を併せて表面筋電計のパッケージで購入する方が価格面でも優位であったため,当該年度には表面筋電計を購入せず,計画的に次年度に繰越を行った. そのため,翌年度分の使用計画としては,表面筋電計の購入に充てるものとする.
|
Research Products
(2 results)