2018 Fiscal Year Research-status Report
新生児脳傷害における足場を用いたニューロン移動のメカニズム解明と再生促進の実現化
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17K18007
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神農 英雄 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (40788387)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ニューロン再生 / 脳傷害 / 新生児 / 脳室下帯 / 放射状グリア |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までのマウスを用いた研究では、①新生児期の脳傷害では、通常生後まもなく消失する放射状グリアが一時的に維持されて、脳室下帯の神経幹細胞から産生されたニューロンが放射状グリアに沿って効率よく傷害部へ移動すること、②放射状グリアを足場とするニューロン移動にN-cadherinを介した接着構造の形成が重要であること、③人工的に作成したN-cadherinが結合した足場スポンジを脳傷害部へ移植することによって、ニューロン移動ならびに再生が促進すること、を示した。平成30年度は上記に示す「新生児期のみにそなわるニューロン再生能力とそのメカニズム」について広く知っていただくため、様々な国内外の学術集会(米国小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本新生児成育医学会など)での発表や講演をおこなった。また、本知見を含めた総説を執筆し、啓蒙活動を行った。 実験については、予備的な段階ではあるが、アデノウィルスを使用した実験から、生後の放射状グリアが脳傷害後にニューロンないし大脳白質を形成するオリゴデンドロサイトの前駆細胞を産生する可能性があるデータを得ている。さらに、早産児では幼児期以降における精神発達遅滞の発生との関連が注目されているが、早産における脳室下帯の神経幹細胞の形態的・機能的・分子学的変化ならびに発達への影響について、マウスを用いて検討をおこなっている。 また、マウスとヒトの脳には大きさ・構造に様々な違いがあるため、将来の臨床応用を考慮したときに、ヒトに構造が類似した動物種を用いて新生児脳が持つ再生能力を検討する必要がある。新生仔ブタは脳構造がヒト新生児と類似していることが知られている。このことから、新生仔ブタ脳の研究を行っている施設と協力し、マウスと同様にニューロン再生能力を持つか検討する予定であり、その準備をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もともと平成30年度中に行う予定であった「生後の放射状グリアがニューロン移動を制御する分子学的メカニズムの解明」に加えて、平成31年度に予定していた、「生後の放射状グリアの特徴をもつ人工的な足場の開発とニューロン再生の促進・神経学的機能の実現、について検討」を遂行することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
大きく3点あげられる。①ヒトの新生児で代表的な脳傷害の1つである白質傷害はオリゴデンドロサイト前駆細胞の成熟障害が主因と考えられているが、新生児期の脳傷害後では脳室下帯からこの前駆細胞が傷害部へ移動すること、放射状グリアが前駆細胞を産生する可能性があるデータを得ている。本年度は、この知見を確証する実験を行う予定である。 ②マウス早産モデルを用いて、早産における脳室下帯の神経幹細胞の機能・ニューロン産生への影響ならびに神経学的機能への影響について検討する。 ③新生児脳傷害への臨床応用を考慮したとき、マウスとヒトの脳には大きさ・構造に様々な違いがあるため、ヒトに構造が類似した動物種を用いて新生児脳が持つ再生能力を検討する必要がある。新生仔ブタは脳構造・脳室下帯の構成がヒトと相関していることが知られており、新生仔ブタ脳を用いて、マウスと同様のニューロン再生能力を持つか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
国内における学会発表について、旅費を用いずに参加することができたため、次年度使用額が生じた。 平成31年度には、当初計画していた研究が順調に進んでおり研究内容を発展させることが可能となる。そのため、生じた次年度使用額は平成31年度における物品費等に使用する予定である。
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[Presentation] Radial glial fibers promote neuronal migration and functional recovery after neonatal brain injury2018
Author(s)
Hideo Jinnou, Masato Sawada, Koya Kawase, Naoko Kaneko, Vicente Herranz-Pérez, Takuya Miyamoto, Toshihiro Akaike, José Manuel García-Verdugo, Itsuki Ajioka, Shinji Saitoh, Kazunobu Sawamoto
Organizer
第60回日本小児神経学会
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