2017 Fiscal Year Research-status Report
The study of the framework necessary for harmonious cooperation of social media participants
Project/Area Number |
17K18074
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大平 哲史 青山学院大学, 情報メディアセンター, 助教 (60711843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感性情報学 / エージェント / ソフトコンピューティング / シミュレーション工学 / 生態学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究代表者が提案したエージェントベースモデル[1]の拡張を行った。このモデルでは、各エージェント(以下プレイヤー)が自分の利得をある程度犠牲にし、相手の裏切り者に対して、その相手との利得の差に比例した確率で、犠牲と同等の罰を与えるという新たな罰の導入が、多様な相互依存関係の下で、協力者数とプレイヤーの平均利得を増加させることを示した。 具体的な拡張内容は、このモデルに、各プレイヤーの相手の裏切り者に対する寛容度と、各プレイヤーの意思によるプレイヤー同士の相互依存関係の動的変化という2つの要素を組み込んだことである。これらの要素については、既存研究[2]を参考にして、各プレイヤーをその戦略(裏切りまたは協力)と望まない相互依存関係を破棄する傾向において、異なる性格を持つように、M種類の異なるタイプに分類した。相互依存関係を破棄した場合は、各プレイヤーが固有の確率α_iで新しい相互依存関係を作るものとした。 当初は、平成29年度にモデルの拡張のみ行い、平成30年度に以上に述べた2つの要素が同時に起こる場合にもたらされる効果を調べる予定であったが、平成29年度の研究がかなり順調に進み、その効果について学術論文[3]として発表できた。 [1] Ohdaira, T. (2016), Sci. Rep. (Nature Publishing Group), vol.6, art. no. 25413.(学術論文・査読有り) [2] Van Segbroeck, S. et al. (2009), Phys. Rev. Lett., vol.102, Issue 5, 058105. [3] Ohdaira, T. (2017), Sci. Rep. (Nature Publishing Group), vol.7, art. no. 12448.(学術論文・査読有り)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、平成29年度の交付申請書に記した研究実施計画よりも、研究はかなり順調に進んでいる。具体的には、研究代表者が学術論文[1]で提案した罰と、既存研究[2]を踏まえ、プレイヤーの戦略のみならずプレイヤー間の相互依存関係もプレイヤーの好みに応じて進化する共進化を組み合わせ、プレイヤー間の相互依存関係が比較的疎である場合に、協力が進化するか否かという点について調べた。これまでの研究で、研究代表者が提案した罰と共進化機構の組み合わせが協力進化に与える影響について調べたものは存在しない。すべてのプレイヤーは自分の好みのプレイヤーとは相互依存関係を維持しようとするが、一方で不満なプレイヤーとの相互依存関係は頻繁に解消する。その結果、研究代表者が提案した罰と共進化機構の組み合わせが、協力進化が生じにくいとされる状況でも、高いレベルの協力進化とプレイヤーの平均利得の大幅な向上をもたらすという新しい知見を得て、それを学術論文[3]として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画よりも研究はかなり順調に進んでいるため、平成30年度は、以下の2つのテーマについて研究を行う。1つ目は、上で述べた学術論文[1,3]のモデルに、新たに各プレイヤーによる相手プレイヤーへの報酬という要素を導入することである。2つ目は、本学の授業「情報スキルII」におけるアンケートにより得られた、学生のソーシャルメディア利用実態に基づき、学術論文[1,3]のモデルをより精緻化、大規模化することである。
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Causes of Carryover |
1つ目は、研究実施計画では未定であった、本研究と関連するテーマを扱う国際会議、国内学会のスケジュールがある程度定まってきたことにより、参加すべき国際会議、国内学会についてよく吟味したためである。2つ目は、平成29年度に本科学研究費により購入したワークステーションのストレージが速度の遅いHDDであり、今後大規模化するシミュレーション実行に際し、そのデータ読み出しと記録速度に不安が出てきたためである。 以上の理由のため、平成29年度予算の残金を使用し、新たに高速なSSDを購入し、現在ワークステーションに内蔵されているHDDをデータのバックアップ用とし、SSDをデータ読み出しと記録のメインストレージとして使用する予定である。また、本研究と関連するテーマを扱う国際会議、国内学会については、引き続きその開催内容を吟味したうえで積極的に参加し、研究成果の発表を行い、異分野の研究者とのネットワーク構築をさらに進めていきたい。
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