2017 Fiscal Year Research-status Report
現代民主主義論における時制の理論的特質―政治権力の過去・現在・未来―
Project/Area Number |
17K18297
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
鵜飼 健史 西南学院大学, 法学部, 准教授 (60705820)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民主主義 / 政治と時間 / 八月革命 / プリコミットメント / 代表 / 政治理論 / ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、民主主義と過去との理論的な関係性について考察を深めた。本研究では、過去による民主主義の理論的制約の事例として、八月革命説とプリコミットメント論を分析する。民主主義を規定する過去の理解を問題化した理論分析の成果は、戦後民主主義における記憶と歴史問題という時事問題をふまえて、西南学院大学法学部紀要で発表された(「民主主義の過去と現在」『法学論集』2018年)。同論文では、カイオスとクロノスというふたつの時間軸が民主主義理論に導入され、どの時点で民主主義は正統化されうるのかという原理的な課題が考察された。本研究では、民主的な国民国家を措定する際の権力作用はもちろんのこと、クロノスの設定という政治闘争の次元を明らかにした。 また当該年度では、政治理論における時間論の研究とともに、その基礎となるような、民主主義についての考察を深めてきた。民主主義における代表概念の特質については、「代表と民主主義」(西南学院大学法学部創設50周年記念論文集編集委員会編『変革期における法学・政治学のフロンティア』日本評論社、2017年)で発表した。本論文は、代表と民主主義というこれまで互換的に扱われてきた政治的概念について、そのすれ違いが顕著になってきた現代政治情勢を背景として、再考察するという実践的な意図によって書かれた。その際、主体認識およびそれをどの時間軸で理解するかが、代表の意味を理解する上で重要な点だと指摘された。本論文は、民主主義における時間・時制における問題と、代表機能との理論的な関係性を考察するための契機となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
民主主義理論における過去に関する論考を、発表することができた。もう少し多様な思想的な営為から、過去についての含意を多角的に分析するという構想を当初は抱いていたが、時間および分量の関係で、短縮せざるを得なくなった。時間と民主主義理論との接点について、想定以上に興味深い議論が展開できるような余地を見つけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の課題は、政治理論における未来の意味を考察することにある。本研究は過去の政治理論の未来という観点からの再読と、ポスト構造主義的な分析視角の導入で、民主主義の理解を深める。本年度ではイギリスでの資料収集および研究交流を予定している。政治理論分野における同方法論で著名な、ラッセ・トマセン博士(ロンドン大学クイーンマリー校)を訪問し、同分野における一線級の学知に触れる。またロンドン大学セナトハウス図書館やユニバーシティ校図書館などを起点として本邦では入手困難な研究論文や政治に関するアート作品を渉猟する。さらに、本研究は民主主義の言説分析という研究手法を導入するため、このテーマに詳しいジェイムズ・マーティン教授およびソール・ニューマン教授が在籍するロンドン大学ゴールドスミス校も訪問する。
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Causes of Carryover |
次年度は在外研究を予定しているため、必要となる機材および送料で多くの支出が見込まれる。また6月に予定されているイギリス出張でも旅費を中心として多額の出費が想定されるので、次年度使用額をこれらに使用するつもりである。
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Research Products
(2 results)