2017 Fiscal Year Research-status Report
河川における放射性セシウムの時空間変動とその動態を規定する要因の解明
Project/Area Number |
17K18341
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Research Institution | 福島県環境創造センター |
Principal Investigator |
倉元 隆之 福島県環境創造センター, 研究部, 主任研究員 (30511513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境放射線(能) / 水文学 / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究計画の1年目として、まずは夏季に福島県および近県において、原発事故発生時の放射性物質の沈着量の違いや流域の面積や傾斜、植生、土地利用、土壌型などの流域の特徴が異なる地点において河川観測の予備調査を実施した。その後、採取した河川水中の溶存態および懸濁態の放射性セシウム(134Cs, 137Cs)濃度などを測定した。冬季には夏季の予備調査を行った地点での観測結果などをもとにして、福島県内で2回目の調査を行った。また、2017年4月に福島県内の帰還困難区域内で林野火災が発生した。当初は想定していなかったが、林野火災により、河川における放射性セシウムの動態を規定する要因が変化している可能性があると考え、林野火災の跡地およびその周辺の河川流域において集中して調査を行った。 GISの解析に必要な機材などの購入を行ったが、GIS解析を行うために必要な地理情報の収集などは遅れている。林野火災の跡地およびその周辺の河川流域で行った調査では、出水時には溶存態および懸濁態の放射性セシウム濃度が高くなる傾向がみられた。また、林野火災により延焼した範囲を含む流域では、非延焼の流域よりSS(懸濁物質)が多く出ていることが分かった。一方で、懸濁態の放射性セシウム濃度には顕著な変化は見られなかった。これまでに得た成果の発信と情報収集のため、国内外の学会に参加した。 このように、1年目の研究は遅れている点もあるが、着実に進んでおり、2年目以降の調査につながる結果が得られていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を計画した段階では各季節に1度の調査を予定していたが、先行研究などを参考にして、夏と冬に一度ずつの調査で十分であると判断して頻度を改めた。しかし、林野火災にかかわる調査を行うことで、本研究を進めるために必要かつ十分なデータは取得できていると考えている。 一方で、当初の計画より遅れ気味の部分があるため、総合的な判定を“(2)おおむね順調に進展している”と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から引き続き、河川の定期観測および河川水中の化学成分測定を行う。なお、観測地点については、適宜、見直しなどを行う予定である。 放射性セシウム濃度及びKd値について、これらの時空間変動規定する要因についてGISを用いた解析を開始する。GIS解析に必要な地理情報などを行い、現場で取得したデータの解析に用いる計画である。 また、成果発表と情報収集のために学会への参加を計画している。
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Causes of Carryover |
試料を処理する装置を当初より安価なものに変えたことや試料数が当初の計画より少なくなったことなどにより差額が生じた。 次年度はこれまでに行っていない化学成分の分析も検討をしている。また、次年度は所属が変わるため、これまでよりも調査にかかる旅費が増加することや研究協力者との研究に関する打ち合わせなどを行うための経費に使用する予定である。
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