2017 Fiscal Year Research-status Report
The comprehensive analysis of type I collagen sequence as a biomarker for distinguishing fossils and archaeological samples.
Project/Area Number |
17K18372
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Research Institution | 国立研究開発法人科学技術振興機構 |
Principal Investigator |
大波 純一 国立研究開発法人科学技術振興機構, バイオサイエンスデータベースセンター, 研究員 (10726623)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コラーゲン / リファレンスデータベース / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は計画通り、探索方針の検討、情報学的手法を利用したコラーゲン配列の単離、保存領域の検討、並びに分子生物学的手法を利用したコラーゲン配列の単離の準備作業を実施した。サンプルについては岩手大学の協力の元、日本に生息するシカの複数個体の組織を入手し、別途イノシシの自然個体の組織を購入した。それぞれのゲノムを抽出し、分子生物学実験のターゲットとした。また、情報学的手法を用いてまだ構造が報告されていない9種の生物のコラーゲン配列を公共データベースから取得した。得られた配列を元に構造解析と保存領域の検討を実施した。3残基ごとのグリシンが定期的に出現する反復構造と、エキソンモジュールの大規模な反復構造を避ける位置に、ハイブリダイゼーション用オリゴヌクレオチドを設計し、PCR用のプライマーとした。作成したプライマーでの増幅実験に着手し、2018年度も継続していく。一方、配列解析の過程で、I型コラーゲンα鎖の塩基配列ごとではなくモジュールごとの進化を示唆する情報が得られた他、領域ごとに反復配列挿入の頻度差があることを確認したため、国内学会での発表を予定している。今後データベースを作成し、新しく確認できたコラーゲンの情報を広く発信していくことで、化石標本や考古学的試料から採取されたコラーゲンとの迅速な比較が可能となり、生物種の同定に役立つものと考えられる。更にアミノ酸残基レベルからエキソンモジュールレベルまで、多様な反復構造を有するコラーゲンの進化史を解明することは、多くの生物の形態形成に重大な役割を持つ繊維状タンパク質や、ゲノム全体の進化にとって有用な情報となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で2017年度に予定していたプロセスを遂行することができた。次年度における解析対象や公開対象としての材料が整いつつあるが、研究対象はより多い方が新たな知見が得られる可能性があり、公開するデータベースとしても有用であるため、引き続き材料の収集については継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2018年度は、コラーゲン配列の分子生物学的手法を利用した単離と、データベース構築、データ解析・研究の総括を実施する。分子生物学的手法による実験においては、予め設計したプライマーを利用し、入手したサンプルのコラーゲン領域の配列決定をおこなう。入手した生体サンプルからのゲノム抽出、設計したオリゴヌクレオチドの合成、PCR による対象領域の増幅、primer-walking による対象領域の配列決定を実施する。コラーゲン領域の全長(約14kbp)の解読を目標とするが、遺伝子の高次構造や抽出されたゲノム中の色素による酵素反応阻害等のために対象領域の増幅やシーケンシングがうまくいかない可能性がある。その場合オリゴヌクレオチドの再設計を1 回程度実施し、期間内に成功しない場合はそこまで解読できた部分配列のみを解析に使用することとする。もし配列解析が成功しない場合は代わりに情報学的な相同領域抽出に専念し、データベースへの機能強化(文献情報の追加等)をおこなうものとする。データベース構築においては、新しく決定した配列や構造について属性情報をまとめ、多様な分野の利用者が自由にアクセスできるオープンデータ環境を提供する。
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Causes of Carryover |
サンプル保管用倉庫との契約を2017年度より開始する予定だったが、仕様を満たす対象の選定に時間がかかり2018年度からの契約となったため。2018年度より次年度使用額の金額にて倉庫の契約を遂行する。
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