2018 Fiscal Year Research-status Report
アート協働制作による社会関係資本形成の社会学的・実践的研究
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17K18464
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
高橋 かおり 立教大学, 社会情報教育研究センター, 助教 (30733787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北田 暁大 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (10313066)
韓 東賢 日本映画大学, 映画学部, 准教授 (50635670) [Withdrawn]
神野 真吾 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90431733)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | アートプロジェクト / 協働 / 社会関係資本 / 芸術社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は2017年度から継続して2つの事例のフィールドワークを実施した。特に参与観察を通じた芸術創造・鑑賞現場におけるミクロレベルでの相互作用と、各ステークホルダーに対するメゾレベルでの聞き取りを中心に行った。 第1の事例としては、名古屋市港区で展開される芸術活動について調査を行った。ここでは、港区・まちづくり協議会の活動をベースとした現代美術の活動と、市の交響楽団の活動を基盤としたクラシック音楽が共存したアッセンブリッジナゴヤが展開されている。この活動からは、現代美術とクラシック音楽が果たす地域における役割の違いが見えてきた。とりわけ集客においては異なった層へのアプローチが展開されていることが観察された。ここから、芸術分野によって生成しやすい社会関係資本に差異があるのではという仮説を生み出した。 第2の事例である大阪市・釜ヶ崎で実施されているアート・プロジェクトBreaker Projectにおいては、2018年度はとりわけBreaker Projectに関わる諸アクターの調査を行った。結果、①地域住民だけではなく、②地域活動協議会、②今宮町会、③大阪市経済戦略局、④教育委員会、⑤西成特区構想委員会、⑥大阪アーツカウンシルといった複数のアクターが当該プロジェクトに関わっていることが明らかとなった。 さらに、 地域における芸術活動と、住民の社会関係資本形成に関する先行研究を整理し、日本における社会と関わる芸術(SEA)と、芸術家の実際に関して学会発表を行った。 また、2019年3月には本研究において重要な先行研究となる『アートと地域づくりの社会学』の著者宮本結佳氏を招いて研究会形式での書評会を実施し、環境社会学から地域における芸術活動へのアプローチについて示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミクロ・メソレベルでのアプローチは進んでいるものの、マクロレベルでのアプローチについてステークホルダーや調査協力者とのとの接触が上手くいかず遅れた。 また、名古屋市港区の事例においては、調査実施団体のスケジュールに合わせ、最終年度の夏まで調査を実施することになったため、まとめの作業があと倒しになる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は本研究の総仕上げを行う予定である。2つの事例の調査結果と先行研究の整理を踏まえ、地域における芸術活動やアートによる共同を見るときの観察指標や、調査における尺度の提案を行う。 名古屋市の事例においては、夏に開催されるアッセンブリッジナゴヤへの参与観察を継続すするとともに、参加アーティストと行政関係者を中心に聞き取りを継続する。また、住民に対する意識調査やイベントにおけるアンケ―ト結果を整理・分析し、住民や来場者の傾向や意見を集約する。とりわけ、音楽と美術の間での社会関係資本形成の差異についてはEuropean Sociological Associationの学会大会にて発表を行い、その後個別論文にまとめる予定である。 大阪市の事例においては、参加住民に対しての量的・質的調査を実施するほかそれ以外の諸アクターのキーパーソンにインタビューを行う。 研究成果の発表については報告書作成のほかに、各調査協力団体への個別の説明を通じて現場への還元と意見交換を行い、学術研究と芸術創造現場の協働を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初はマクロレベルでの質問紙調査を予定していたが、調査協力団体ですでに同様の調査が実施されている、あるいは実施予定であることが分かった。そのため既存データを活用、または実施予定の調査紙調査において質問追加をすることになり、独自の質問紙調査を実施しなくなったことにより、次年度使用額が生じた。 2019年度は、これらの既存の質問紙調査の再分析や解釈を行うとともに、長期の参与観察を実施し、量的調査との関係性を明らかにする。具体的には、マクロレベルでの行政や組織変化、メソレベルでのステークホルダー同士の関係、ミクロレベルでの現場での相互作用感のかかわりを見るため、これまでよりも長期にわたる参与観察を予定している。
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Research Products
(4 results)