2018 Fiscal Year Research-status Report
Formation of Late-Modern Buraku, and the Structure of the Agreement: Buraku and the Development of Military Cities
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17K18601
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
小早川 明良 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (10601841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 秀男 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50079266)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 被差別部落 / 近代 / 軍事都市 / 海軍鎮守府 / 土木労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、自然条件により計画を変更せざるをえず、舞鶴市内4カ所の被差別部落と広島市F町に重点的に調査した。前者に関しては、フィールドワークとインタビュー、資料の収集が進んだ。それによって4カ所の被差別部落の形成その成立年をほぼ特定したこと、鳥取県の被差別部落から来住した人々が舞鶴で被差別部落を新たに形成したとする従来の学説批判を可能にする根拠をえた。「被差別部落の形成」にとって、「誰が被差別部落民になったか」は極めて重要だが、本研究では、それは、鳥取県に限らず、広く他の道府県から舞鶴市に来訪した人々の内、それぞれの理由で帰郷困難者たちであったことが明らかになった。それには家族形成も要因であったことをつきとめた。 さらに重要事項として、戦後形成の被差別部落を確認した。これは、近代の被差別部落構築過程を解明する上で画期的な「発見」であり、本研究の「同意の形成」の解明の手がかりである。それは、人びとが、自分たちの内のある人々を被差別部落民とするまなざしとメカニズム、それへの当事者の「同意」の形成と権力作用を解明することを助ける。 広島市に関する研究は、前年度同様F町研究会への参加と研究発表を行った。広島市が軍都として形成される過程のF町の労働者の所得、町内資本の蓄積と貨幣退蔵、貧困化などを分析した。さらに、先行研究ではその存在が認められなかった明治初期の学制に依るF町立小学校を確認できた。これは、被差別部落民の包摂と排除を分析する上で重要である。 本研究は、成果を国民にわかりやすく還元することが問われている。幸い出版社の厚意もあって、『被差別部落の真実を』上梓したことも成果としたい。海外への発信という課題については、英語版のウェブサイト運営を軌道に乗せた。現在35カ国からの閲覧者を確認している。米国人研究者を被差別部落のフィールドワークに案内できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れていると判断した理由は、研究対象地域が未曾有の自然災害に見舞われたことによる。 本研究は、広島県呉市、同広島市、京都府舞鶴市を対象として、近代由来の被差別部落を対象としている。この研究には、これらの対象地域とその周辺地域にたいするフィールドワークが必須である。しかし、2018年7月、広く西日本を襲った水害は、調査対象地域も巻き込んで、多大な被害をもたらした。とくに調査を予定していた呉市T地区の人々は、文字通り壊滅的な被害を受けられ、いまなおたいへん不自由な生活を強いられておられる。また、呉全体としても、入市すら困難時期がいた。当地で、研究に協力して下さる方の助言もあり、2019年3月まで、フィールドワークなどの調査を中止していた。結局、予定していた研究論文の投稿もかなわなかった。 舞鶴市に関しても、同じく7月の西日本水害によって被害を受け、交通機関が一時的に不通になった。そのため、フィールドワーク、インタビューなどの予定に出遅れがでた。しかし、思いの外、早期に復旧がかなったことと、地元の関係者の方たちや舞鶴市市役所の関係課の協力があり、調査の遅れを取り戻すことができた。結果的に、当初予定を繰り上げて、舞鶴市については、おおむね調査を終えることができた。 残る広島市に関しては、予定通りに進行している。しかし、本研究全体としては、上記のとおり、やや遅れているとの自己判断をせざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究当初の計画では、2019年のはじめに「前年度より繰り越した舞鶴市にかんする研究」を予定したが、呉市の状況によって舞鶴市への調査に傾注した結果、それは、前年度でおおむね終了した。そして現在、幸いにして呉市の復旧は、徐々に進んできた。したがって、すでに遅れを取り戻すべく、調査を再開している。具体的には、3点があげられる。まず、重点的にT地区を中心に被差別部落の形成について調査し現状を把握する。つぎに、呉市の当該地域に在住する内協力者の支援を得て、Y町内のインタビューなどの調査と、被差別部落として眼差しをうけたY町3地区がどのようにして、被差別部落と非被差別部落に隔てられたかの調査を至急完了する。また、それに関して、眼差していた市民からのヒアリングも再開する。 舞鶴市に関しては、すでにまとめに取り掛かっている。次に、それと並行して広島市に関するまとめも目途がついている。その上で、2107、2018年度においてえられた全体のデータや成果の評価を行い、呉市のまとめを加速する。 あわせて、それまでに収集した資料、データが本研究の目的を実証する能力をもつものであるかを検討する。その成果を論文にまとめ、ふさわしい紀要に投稿する。 研究の最終年度でもある本年は、査読論文の投稿、そのうえで、研究全体として、目的に照らして何が言え、何が言えないのかを論じたい。それは、既に発表した査読付論文とともに「報告書」として一冊にまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、調査対象地域が自然災害に見舞われたことである。まず、舞鶴市への調査は、結果的に予定していた2泊3日のフィールドワークを2回中止せざるを得なかった。したがってそのための予算を執行できなかった。また呉市については、交通網が寸断されて、市内に入りことすら困難状況が続いた。したがって、予定していた泊まり込みでの調査が全くできなかった。交通の再開と調査が可能になる状況まで回復することに期待して予算執行を調整したが、結局執行できなかった。 当初予定の今年度予算は、報告書作成などに多くを支出することとしており、2018年に予定していた当該地域への調査を本年度前半にスライドして重点的に行えば、予算執行は可能であると考えている。
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Research Products
(6 results)