2018 Fiscal Year Research-status Report
A transdisciplinary, integral and theory-oriented study for the preservation, innovation and presentation of 'Japansese language and culture'
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17K18610
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津城 寛文 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30212054)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 多言語世界 / 自動翻訳 / 同時通訳 / 日本語表記 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語学術文書の翻訳に関して、7月初旬に「日本語文書の翻訳・発信」と題するシンポジウム&セミナーを開催した。宗教、神道、漢方医学の3領域の専門家を迎え、それぞれの用語、文書の翻訳の諸問題について、発題を行なってもらい、相互にコメントし、全員で討議を行なった。私自身の発表、「日本語表記・自動翻訳・同時通訳会議」は、2017年度のテーマ「日本語の翻訳と表記――指導翻訳の時代を見据えて」のサブタイトル側に、重点を移したものである。この重点の移行には、バルセロナ自治大学における、通訳会議室Interpreting Roomでの実験を見学したことが、大きく影響している。 9月中旬には、本務校の同僚2名とともに、ヨーロッパを訪問し、まずスペインのバルセロナ自治大学において、日本語学術文書の翻訳と、自動翻訳に関する昨年の交流を継続して、通訳会議室で通訳会議のデモンストレーションを行ない、課題を共有し、今後の研究の方向を検討した。 その一環で、つぎに、クロアチアのプーラ大学を訪問し、本務校との協定を記念するシンポジウムで、'From <Deep Culture> to <Peak Culture>: Cultural Achivements through Innate Course' というタイトルの発表を行なった。この発表は、昨年のバルセロナ自治大学における講演と重なるが、切り口が異なっており、文化の内発性を強調したものである。 研究課題の直接の成果として、「来るべき多言語世界における日本語の翻訳発信のために」(『国際日本研究紀要』11号、2019年2月)を発表し、分野横断的な読者層に向けて、問題提起を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、4つの課題を設定していた。1、近代以降の日本語の翻訳全般の問題の再検討。2、相互翻訳に適合的な日本語の表記・文体の検討。3、日本オリジナルのキーワードの系譜。4、日本の頂点文化の保存、刷新、発信。 このうち、1と2について、今年度、シンポジウム、セミナー、研究ノートの形で、集中的に展開し、多少とも先に進めることができた。 3については、それまで進めていた研究をまとめる形で、すでに2015年度に、研究ノートにまとめ、今後の方向性を定めることができていた。今後の作業としては、直輸入ではない、日本語オリジナルのキーワードを、過去の文献に探すことと、あるいは、現代のわれわれが、新たなキーワードを提案することを念頭に、資料整理を進めたい。 4の課題である「頂点文化」の発信について。この概念は、まさに現在、私自身が提案し、洗練しつつあるもので、キーワードの輸出という意味でも、重要なものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究が設定した4つの課題のうち、4つめの、日本の頂点文化の保存、刷新、発信について、集中的に研究を進める。 2018年度の時点で、「頂点文化」の概念を理論的に洗練しつつあるが、「頂点」とすべき具体的な諸文化、能、茶道、武士道、神道、和歌の5文化について、研究対象として掘り下げていない。神道と和歌以外は、私の専門外でもあり、これらを総合的に論ずるには、専門家との共同研究が必要である。 このような理由から、2019年度9月、「日本の頂点文化」をテーマとするシンポジウム&セミナーを企画したところである。すでに発題者は決定し、準備作業に入っている。
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