2018 Fiscal Year Research-status Report
「未来をつくる研究」としての外国人児童生徒教育研究‐台湾の「新南向政策」分析‐
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17K18616
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
志賀 幹郎 電気通信大学, 国際教育センター, 准教授 (70272747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所澤 潤 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (00235722)
小川 早百合 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20276653)
林 初梅 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (20609573)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 外国人児童生徒教育 / 台湾 / 移民政策 / 比較教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
学校内外での教育支援や政策提言を行う民間非営利組織の重要性に着目し、精力的に移民支援活動を展開するジャーナリスト張正、廖雲章両氏に聞き取り調査を行った。台湾における両氏の活動については、研究協力者(翁麗芳)から詳細な情報を得た。また、関連する他の移民支援団体の活動の実地調査を行った。調査内容の検討により、張正、廖雲章両氏の活動には、移民の自己表出を重視する特徴を認めた。さらに、両氏には人権派の社会学者成露茜の影響が大きいと把握し、思想上の影響について考察した。 この両氏の活動の特徴及び成露茜の人権思想の影響については、年度末の研究会(2019.2.15 聖心女子大学 台湾から研究協力者2名参加(翁麗芳、洪福財))において公表し、意見を交換した。成露茜に止まらず、父親で近代中国のジャーナリズム界に大きな足跡を残した成舎我を視野に入れるアイディアが示唆され、それに取り組むこととなった。 同研究会においては、「十二年国民基本教育課程綱要総綱」に基づき2018年度から開始された新住民言語教育の実施状況と課題について、研究協力者から説明を受けた。教学体制や教材整備に課題はあるが、多元文化を追求する教育施策として、「新南向政策」に通じる民進党政権の価値観が反映しているとの見解に及んだ。このテーマについては、研究分担者(林初梅)が主に取り組んだ。 経済関係強化だけではなく人権や多元文化による東南アジア諸国等との関係強化という観点から「新南向政策」を論じる意義を研究協力者と確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地での聞き取り調査、研究協力者を招聘しての研究会の開催を予定どおり行った。 前年度までに構築した研究協力者との協力関係をさらに強固にすることができた。 新住民言語教育が開始されることから、それを一つの研究対象とすることを企図していたが、研究が進展し研究分担者(林初梅)の成果を生んだ。 民間非営利組織の重要性を追求する今年度の目標に沿って、聞き取り調査等を進展させることができた。調査対象について中国・台湾のジャーナリズム史に関わる影響関係に新たに着目することとなったが、これは当初予期していなかったことで、資料の整理・分析が終わっていない。 比較考察の対象となる日本での外国人児童生徒教育の歴史・現状把握については、研究組織各々が調査・分析を進めたが、全体としての共通認識には達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に入るので、成果の公表に努める。 前半には、前年度末の研究会でテーマとなった、民間非営利組織の役割・意義について、報告書を作成する。内容は、張正、廖雲章両氏の活動と思想的背景が中心になるが、日本の外国人児童生徒教育における民間非営利組織の役割・意義・今後の展望についても考察する。そのための聞き取り調査、資料収集を行う。 年度末には、「新南向政策」の人権・多元性の重視という特徴に光を当て、移民支援、言語教育、国際関係構築の実態と今後の展望をテーマとする公開研究会を開催する。そして、日本の状況への提言を行いたい。そのための聞き取り調査、資料収集を行うとともに、研究会開催等により、研究組織各員の知識共有、理解進展を図る。
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Causes of Carryover |
物品費、旅費については計画通り予算執行ができた。聞き取り調査が効率的に行われたため、調査補助、資料翻訳に充てる予定の謝金が残った。この分は、次年度に行う補充調査における調査補助および資料翻訳のために使用する計画である。 次年度は、報告書発行、研究協力者を招聘した公開研究会の開催及び成果発表を行うため、その必要諸経費と補充調査を含めた準備のための諸経費に助成金を支出する予定である。
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Research Products
(3 results)