2018 Fiscal Year Research-status Report
Component development for ultimate high band-width data acquisition system for future nuclear and high-energy experiments
Project/Area Number |
17K18783
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
田中 義人 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (30269089)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | データ収集システム / DAQ / FPGA / GPUコンピューティング / 原子核実験 / 高エネルギー物理学実験 / 重イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
CERN-LHCにおける高エネルギー原子核衝突実験ALICEは、第三期高輝度実験に向け検出器の大幅な高度化を進めている。我が国のJ-PARCにおいても大規模重イオン実験構想が控えている。これらの次世代実験では、従来を一桁上回るビーム強度の向上が見込まれ、より詳細な衝突事象の研究が可能となる一方、検出器のデータ量も莫大なものとなり、従来のように全実験データを一旦蓄積し後日解析する事は最早不可能となる。そこで本研究では、実験データをオンラインで高度に処理する広帯域データ処理システムの実現に向け、必須となる要素技術の開発を開始した。 本システムでは、FPGA、GP-GPU、CPU等の異種の処理装置を融合させ、ノードあたり~200Gbpsのデータ処理能力を目指す。最近のFPGAは多くの高速SERDESを有し、検出器データを直接受信し比較的単純なフィルタ処理を行うのに最適である。FPGAで処理されたデータを、高速バスによりGPU および CPU に転送し、より複雑な解析、例えばトラッキング処理を行うのが、本システムの基本構想となる。 2018年度は、FPGAによるデジタル信号処理アルゴリズムの設計を中心に、ALICE実験におけるデータ処理をターゲットにして開発を進めた。FPGA一基あたり80Gbps程度のデータスループットを目指しながら、SERDESを用いた検出器データの取得、ADCのペデスタル値の除去、電子クラスタの同定および特徴量の算出、PCI Expressへのデータの受け渡し、などを行うアルゴリズムをハードウェア記述言語によって実装した。 これらの実装例をふまえ、他の実験計画への応用可能性等を学会等で議論した。また、2019年3月には、ALICE FoCalプロジェクトでの応用可能性について筑波大学で開かれた国際研究会で連携研究者が発表・議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
デジタルシグナル処理のモジュール開発は順調に進んでおり、実際に将来のALICEでの使用に耐えうるものが完成しつつある。この点では大変順調に進展しているといえる。しかし、本研究の完遂に必須となる大型FPGAを搭載したボードを、CERN-ALICEグループらと共同開発してきたが、電源部設計に重大な問題が見つかり、製造が当初予定より1年以上遅れた。結果、同ボードにて行う予定であったファームウェア動作検証と、データ処理性能測定実験の実施が、2019年6月頃にずれ込む見通しとなったため、本研究課題の延長を申請し、継続実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
CERN・ALICEと共同開発しているFPGAボードが間もなく完成するので、これを計算機筐体に組み込み、これまでに開発したデジタルシグナル処理モジュールを含むファームウェアを走らせ、データ転送等のテストとパフォーマンス評価を行う。その結果をふまえて、異種プロセッサ間のデータ通信とデータ処理の高速化・高効率化、すなわちノード一台あたりの処理能力の最大化を図る。 また、物理実験を行うユーザーが自由にそのシステム構成を変更し、複数種類のプロセッサのファームウェアおよびソフトウェアを統合的に開発できるよう、開発手法をも含めたシステムの検討を行っていく。 本研究では、PCI Express Gen3を異種デバイス間通信に用いるが、将来これを越えるデータ転送を如何にして実現するかを検討していく。民間では様々なプロジェクトが立ち上がっているが、これらの中に物理実験に応用できるものが果たしてあるのか、あるとしたらどのように組み込むのか、が鍵となると思われるので、注視しつつ、可能なものを要素開発実験に取り入れていく。
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Causes of Carryover |
本研究では、ALICE実験およびCERNの他の実験で共同開発しているFPGAボードを実際にPCに組み込み、データ処理性能の評価・性能向上を行う予定であった。このボードは、遅くとも2018年度はじめには入手可能と思われたが、初期ロットのテスト中に電源回路部分に不具合があることがわかり、生産会社側における設計段階からの修正の必要性があるとわかった。その後、回路の修正も終わり、無事生産開始することができたため、入手は2019年度前半になるとみられる。 尚、2019年度の助成金申請額はゼロであり、2018年度の残額は、このボードを用いた最終テストに関わる部品等の消耗品費用、および学会等における最終結果の公表に充てる予定である。
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