2017 Fiscal Year Research-status Report
Elemental technology research for seamless development of the large deployment structures with shape-variable function in the ground and the space
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17K18924
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
向井 洋一 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (70252616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝又 暢久 室蘭工業大学, 工学研究科, 助教 (60534948)
上田 政人 日本大学, 理工学部, 准教授 (80434116)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 同期展開構造 / 厚みを考慮した折り紙 / 大型平面構造 / フェーズドアレイアンテナ / マルチマテリアル3Dプリンティング / 折り畳みシェル / 接合 / 耐衝撃性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、伝統的な「折紙」の技法を応用した構造システムの実用化に必要な要素技術検証に取組むことを目的とし、同期展開可能な剛体折紙の代表的な折り方である「ミウラ折り」を応用した折畳・展開機構を有する構造物構築ための技術的課題を検討した。初年度は、以下の3つの要素技術研究に着手した。 ①構造システムの要素技術検討:建築構造利用のためは、板要素とヒンジ部に所定の剛性と強度を与える必要性から板厚の考慮が必要となる。運動時のパネル間干渉を回避させる「改良ヒンジ型ミウラ折り」モデルの運動機構と折畳・展開時の同期性について、スタディモデルでの試験とともに、軌道追跡モデル解析による検証を行い、改良ヒンジ型ミウラ折りの幾何学的定量化を行った。さらに、システムの耐衝撃性と力学性能評価のための構造解析モデル構築に取組んだ。 ②可動機構と形状制御・安定化の要素技術検討:厚みがあっても折りたたむことができる厚板ミウラ折りについて、展開時のヒンジ剛性が展開板構造全体の剛性に与える影響について検討した。汎用有限要素解析ソフトを用いて固有振動数と振動モードを評価した。ヒンジ部に剛性がない場合はクタクタに折れ曲がる板構造だが、展開後のラッチに相当するヒンジ剛性を付与することで、一枚の板構造に近い固有振動数と振動モードとなることが確認された。 ③変形追従性に関する要素技術検討:変形追従性に関する検討課題としていた剛体部と可動部との接合要素技術として、剛性の高い汎用樹脂と柔軟なエラストマー樹脂とを同時に3Dプリントすることにより、機械的ヒンジを持たない折畳み可能なシェルを一工程にて製作する方法を提案した。実際に3Dプリントした折り畳みシェルの繰り返し曲げ試験を実施することにより、繰り返し曲げ変形に耐える接合部であることを確認した。以上より、折り畳みシェルの軽量化と製作工程の簡略化が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①構造システムの要素技術検討については、折畳・展開構造による折板シェルの形状安定化と外力作用に対する応答評価のために、運動機構を表現する幾何学的適合条件式により、折畳・展開途中の折板シェル状態についてのワイヤーフレームモデルを作成し、構造解析による応力伝達性状の評価を試みた。当初の研究計画では模型実験を先行して行う予定であったが、予備解析により、構造システムとしての力学性能に対して、ヒンジ部の摩擦抵抗やパネル部の面外剛性などの影響がセンシティブであることが明らかとなり、モデル解析によるパラメータスタディをまず実施した上で、実験用モデルの仕様や実験条件を決定することとした。 ②可動機構と形状制御・安定化の要素技術検討については、当初の予定通り、ヒンジ剛性が板構造全体の剛性に与える影響を、有限要素解析により整理した。折りたたみ時に折り線となるヒンジ部の剛性が全て高ければ、一枚の板構造の固有振動数、振動モードに近づくことは当たり前だが、部分的にヒンジ剛性を高くするだけでも同様の効果が得られることが解析的に示され、次年度の研究に有用な結果を得た。 ③変形追従性に関する要素技術検討については、当初の予定通り、マルチマテリアル3Dプリンタを用いて剛性部と柔軟部とを一工程にて製作する方法を開発した。また、この方法で製作した折り畳みシェルの繰り返し曲げ試験を実施することにより、繰り返し曲げ変形に耐える接合部が製作可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
①地上構造物への適用をにらんで、折板建築(折畳と展開の中間状態)において、構造体の剛性や耐衝撃性、振動性状等の特性に関する検証を進めていく。振動台実験や落下物衝突試験等により、荷重-変形関係、動的応答評価を行うことを検討している。また、FEMモデル解析により、モデル形状の相違による応力分布の評価、最適形状の検討等を行う。 ②今年度の基礎的検討を踏まえ、実際の宇宙構造物として要求される一辺30mクラスの大型平面アンテナ構造についての検討を行う。アンテナの使用周波数と要求される平面精度が決まっていることから、その平面精度を達成するために必要なヒンジ剛性や厚板ミウラ折り構造を構成するパネルの各種寸法などについて検討を行い、宇宙構造物システムとしての技術課題を検討する。 ③今年度までは折畳みシェルの剛性の高い部分に汎用樹脂を使用したが、今後は宇宙構造物に使われる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いて折り畳みシェルの3Dプリントを行っていく。更に、折り畳み部のメカニカルアンカー形状の最適化により、接合部の引き抜き強度の最大化と、繰り返し負荷に対する耐久性の向上について検討を行う。
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Causes of Carryover |
ミウラ折りによる展開構造の建築構造物利用を想定し、厚みのある板要素がヒンジ周りで運動する際に、パネル間干渉を生じて運動機構が成立しない問題の回避のために「改良ヒンジ型ミウラ折り」の提案とその機構の検証をゆった実施した研究成果について、国際論文(オープンアクセスジャーナル)への投稿準備を進めたが、2017年度内に掲載決定を受けられなかったため、当該論文の投稿料については、翌年度に使用する必要が生じた。当該論文の掲載が決定されれば、2018年度において、当初計画通りに適切に使用できる予定である。
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Research Products
(3 results)