2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19212
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田上 俊輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, ユニットリーダー (40586939)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ペプチド / RNAポリメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の動態を自由に操ることは生物学の究極的課題の1つである.そのために,本研究では人為的に細胞内の酵素の機能を変換する因子を開発する.細胞の動態を制御するためには,細胞内でシグナルや情報が集約的に入出力される分子・経路を標的とすべきである.その意味で,転写・複製などの核酸合成系は理想的な標的といえる.転写・複製は細胞内での遺伝子発現調節が集約される反応系で,多くのタンパク質や低分子がDNA/RNAポリメラーゼの機能調節に関わっている.もし,ポリメラーゼに対して高度な機能を持った調節因子を人工的に合成することができれば,細胞工学・医療での応用可能性は大きい.そこで本研究では,ポリメラーゼをヌクレアーゼに変換するペプチドの開発によって,細胞内での核酸合成・分解を制御すること目指す.本研究ではまず標的として扱いやすいT7 RNAポリメラーゼを用いているが,最終的にはテロメラーゼやウィルス由来のポリメラーゼを標的とした活性変換ペプチドの開発を目標としている. 本年度は,前年度に確立したヌクレアーゼ反応依存的にペプチドを選択するスクリーニング系を利用して,T7RNAポリメラーゼの活性を変換するペプチドのスクリーニングを行った.環状化ペプチドライブラリーの利用なども行ったが現在までに有効なペプチドは得られていない.そこで,通常のmRNA displayを用いてまずT7RNAポリメラーゼへ結合するペプチドを選択し,その後にヌクレアーゼ活性依存的改良型mRNA displayを利用することに方針転換した.現在,T7RNAポリメラーゼ結合ペプチドのスクリーニングの準備を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,前年度に確立したヌクレアーゼ反応依存的にペプチドを選択するスクリーニング系を利用して,T7RNAポリメラーゼの活性を変換するペプチドのスクリーニングを行った.この系では通常のmRNA display法と申請者がこれまでに開発したポリメラーゼの試験管内進化法を(Tagami S et al., Nature Chemistry, 2017)組み合わせることによって,ヌクレアーゼ反応が起きたときのみペプチドが回収されるスクリーニングを実現している.今年度は,この改良型mRNA display法において,さらにペプチドを環状化し,より機能性の高いペプチドを得やすくする方法の導入なども行った.しかし,これまでに6ラウンドのスクリーニングを行ったが,現状のスクリーニング系はネガティブコントロールでもかなりのペプチド(0.1%ほど)が回収されてしまうため,効率のよいスクリーニングが出来ておらず,有用なペプチドも得られていない.そこで通常のmRNA displayを用いてまずT7RNAポリメラーゼへ結合するペプチドを選択し,その後にヌクレアーゼ活性依存的改良型mRNA displayを利用することに方針転換した.現在,T7RNAポリメラーゼ結合ペプチドのスクリーニングの準備を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は通常のmRNA displayを用いてまずT7RNAポリメラーゼへ結合するペプチドを選択し,その後にヌクレアーゼ活性依存的改良型mRNA displayを用いてT7RNAポリメラーゼ結合ペプチドをさらに改変し,活性変換ペプチドの取得を目指す.ポリメラーゼ・ヌクレアーゼ活性変換因子がスクリーニングによって獲得された際にはさらに生化学実験やX線結晶構造解析により,獲得されたペプチドの作用機構を明らかにする. その後,さらにT7 RNAポリメラーゼ以外の標的に対するペプチドスクリーニングも行う.本研究では,機能性ペプチドのセレクションのために,大量の標的分子(ポリメラーゼ)を用意しなければならない.そのため標的分子は大量調整しやすいものが好ましい.まずは考えられる候補の中から(テロメラーゼやHIV,HBV等の病原ウィルス由来のポリメラーゼ ),本研究に適した性質(発現量・安定性)を持つポリメラーゼを選択する.重要な標的ポリメラーゼが不安定で扱いにくい場合には,標的ポリメラーゼ自体の安定な変異体作成を試みる.具体的にはコンセンサスプロテインデザイン法(Porebski BT et al., 2015, Protein Eng Des Sel)による熱安定変異体の取得等を行う.
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Causes of Carryover |
本年度は,前年度に確立したヌクレアーゼ反応依存的にペプチドを選択するスクリーニング系を利用して,T7RNAポリメラーゼの活性を変換するペプチドのスクリーニングを行った.この系では通常のmRNA display法と申請者がこれまでに開発したポリメラーゼの試験管内進化法を(Tagami S et al., Nature Chemistry, 2017)組み合わせることによって,ヌクレアーゼ反応が起きたときのみペプチドが回収されるスクリーニングを実現している.しかし,これまでに6ラウンドのスクリーニングを行ったが,現状のスクリーニング系はネガティブコントロールでもかなりのペプチド(0.1%ほど)が回収されてしまうため,効率のよいスクリーニングが出来ておらず,有用なペプチドも得られていない.そこで通常のmRNA displayを用いてまずT7RNAポリメラーゼへ結合するペプチドを選択し,その後にヌクレアーゼ活性依存的改良型mRNA displayを利用することに方針転換した.現在,T7RNAポリメラーゼ結合ペプチドのスクリーニングの準備を行っている.以上のような状況で実験に多少の遅れが出ているため次年度使用額が生じた.未使用額は次年度にmRNA display用の特殊な修飾核酸・試薬の購入に利用する.
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