2017 Fiscal Year Research-status Report
病魚自身の血清抗体を利用した簡単・迅速・安価な病原体特定手法の開発
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17K19302
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
松山 知正 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, グループ長 (20372021)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 抗体 / 病原体 / 診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
病魚の血清に含まれる抗体を利用して、病魚の感染臓器から病原体を精製するために、本年度は主に、感染試験により作出した病魚から血清および臓器の採材と保存を行った。ブリとヒラメについて各3種類、ギンザケについて1種類の病原体(細菌4種とウイルス3種)を用いて感染試験を行い、供試魚の約半数が死亡した時点で無作為に取り上げた供試魚より腎臓および脾臓を採材し、ディープフリーザーに保存した。血清は、感染から2-4週間の間に採取した。一部の魚種および病原体の組み合わせで血清抗体価を測定したところ、多くの個体で感染させた病原体に対する抗体価が上昇していた。 魚類に共通して血中抗体と結合する担体を探索したところ、proteinA担体により効率的に抗体を吸着できるが、製品によって性能に差が有ることが明らかとなった。また、最も成績の良かった担体を用いても、ウナギの抗体は吸着することができなかった。 極微量の病原体からゲノムを増幅する方法を検討したところ、断片化したゲノムにアダプターを連結し、アダプターに特異的なプライマーを用いてPCRにより増幅する手法では、細菌のようなゲノムサイズの比較的大きい病原体には有効だが、ウイルスのようなゲノムサイズの小さな病原体では増幅効率が低かった。一方で、ローリングサークル法による増幅ではゲノムの大小にかかわらず増幅が可能であった。ローリングサークル法で増幅したゲノムを超音波で断片化し、プラスミドにクローニングし、インサートをシーケンスすることで、2日間で標的病原体のゲノム配列を取得することが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、感染試験により作出した病魚から血清と臓器を保存するとともに、血清抗体カラムの作成方法と、微量な病原体ゲノムを増幅してシーケンスする方法の条件検討を完了した。 具体的には、感染試験はヒラメを用いてEdwardsiella tarda(グラム陰性細菌), Streptococcus iniae(グラム陽性細菌), Viral hemorrhagic septicemia virus (一本鎖RNAウイルス)、ブリを用いてNocardia seriolae(グラム陽性細菌), Ichthyobacterium seriolicida(グラム陰性細菌)とマダイイリドウイルス(二本鎖DNAウイルス)、ギンザケを用いてPiscin reovirus 2(二本鎖RNAウイルス)の感染試験を実施した。ギンザケ以外の魚種では、供試魚の約半数が死亡した時点で無作為に取り上げた供試魚より腎臓および脾臓を採材し、ディープフリーザーに保存した。ギンザケでは死亡が起こらなかったため、感染2週間後に同組織を採材した。血清は、感染から2-4週間の間に採取した。E. tardaおよびS. iniaeに感染したヒラメの血清抗体価を測定したところ、多くの個体で各細菌に対する抗体価が上昇していた。 血清抗体カラムの作製法では、魚類に共通して血中抗体と結合する担体を探索したところ、proteinA担体によりブリ属、マダイ、ヒラメ、マハタ、イシダイの抗体を吸着できるが、ウナギは供試したいずれの担体にも結合しなかった。 微量な病原体ゲノムを増幅し、クローニングする手法を検討し、ローリングサークル法によって非特異的に増幅したゲノムを、超音波によって物理的に切断し、プラスミドベクターにランダムにクローニングする方法によって、細菌とウイルスで共通の手法で簡単かつ迅速にライブラリー化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に保存した病魚の血清と臓器を用いて、条件検討により確立した血清抗体カラムの作成方法と、微量な病原体からゲノム情報を取得する方法を組み合わせ、本研究で目的とする迅速で簡単な病原体の特定が可能か検証する。検出系が確立された後に、病原体が不明の検体について本手法を応用し、病原体の特定を試みる。
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