2018 Fiscal Year Research-status Report
野外の生物における季節変化に対する染色体ダイナミクスの解析
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17K19350
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 佑 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD) (70780906)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 染色体動態 / 環境応答 / 自然環境下 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「野外の生物が遺伝子の機能するタイミングをいかに制御しているのか」という疑問を染色体のダイナミクスから理解することにある。この目的を達成するため、植物が冬期の低温を経験する事で春に開花する「春化」の過程に着目し、野外の植物を用いた季節による染色体ダイナミクスの違いの検出を進めている。平成30年度においては以下の計画を実施した。 1、野外でのサンプリング 前年度から引き続き、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の近縁種で多年草のハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)を対象に、野外でのサンプリングを実施した。具体的には、兵庫県多可郡の渓流沿いに群生するハクサンハタザオの自然集団を調査対象とし、葉の組織のサンプリング・ホルムアルデヒドによる固定を行った。この際、下記のHi-C法のためのサンプルに加え、採集した葉の一部をRNA抽出用として分割して保存した。 2、染色体ダイナミクスの検出 サンプリングされた組織を材料に、Hi-C(high-throughput chromosome conformation capture)法による染色体ダイナミクスの検出実験を行った。その結果、冬期のサンプルについて染色体ダイナミクスのデータ取得に成功した。現在もデータの解析を進めている段階ではあるが、特定の遺伝子座周辺の他のゲノム領域との相互作用の情報など、野外環境下で長期の低温を経験した植物における、核内の染色体相互作用が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外でのサンプリングが進行し、最も注目していた時期である冬期についてのデータ取得に成功した。そのため、本研究計画は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は採集した組織を材料にHi-C法による染色体ダイナミクスの検出実験を進める。同時にRNA-seqやChIP-seqによる、エピゲノム状態の検出結果との比較の準備も進める予定である。
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Causes of Carryover |
当初は、使用する次世代シーケンサーをIllumina社のHiseq2500やHiseq4000を想定していたが、採択後、より安価で出力の大きい同社のHiseqXシステムが利用可能になったことで、コストが低減した。
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