2017 Fiscal Year Research-status Report
精巣特異的代謝物による精子形成と次世代発生の制御プログラム
Project/Area Number |
17K19508
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本橋 ほづみ 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00282351)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 精子形成 / 代謝物 / 乳酸脱水素酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)は、脳腫瘍や白血病で高頻度に見いだされるイソクエン酸脱水素酵素 (IDH1) の機能獲得変異により産生されるオンコメタボライトであり、正常細胞にはほとんど存在しないとされる。本研究提案に先立ち、精巣において精細胞特異的に発現する乳酸脱水素酵素C (LDHC) が、2-ヒドロキシグルタル酸 (2-HG) を積極的に産生していることを発見した。そして新たに作成したLdhc欠損雄マウスと野生型雌マウスの交配からは産仔が得られず、Ldhc欠損精子の機能障害による受精率の低下と、胎生致死が原因であることが示唆されている。これらの結果は、2-HGが生理的条件において産生される代謝物であり、かつ、雄の生殖能と次世代の正常な発生に重要な役割を果たしていることを示唆する。そこで、本研究では、精巣で特異的に産生される代謝物2-HGが精子形成において果たす役割を明らかにし、代謝物が精子形成を制御し、さらに次世代の発生にも影響を及ぼすという新しい概念の創出を目指す。 本年度は、Ldhcノックアウトマウスの精子形成とその受精能について検討を行った。Ldhcノックアウトマウスでは、精子形成はほぼ正常に行われているものの、その運動能が著しく低下していること、また、正常な野生型雌マウスの卵に対して人工受精をして得られるLdhcヘテロマウスの出生率が、野生型マウスの精子による人工受精に比較してやや低下傾向にあるという結果が得られた。これは、精子形成に際しての2-HGが次世代の発生に影響を及ぼしていることを示唆する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ldhc欠損雄マウスの精子を用いた体外受精実験から、精子形成時における代謝が次世代における発生過程へ影響する可能性が示唆されている。しかし、まだ実験回数が少ないため、今後さらに回数を重ねて結果の確認を行う必要がある。また、Ldhc欠損マウスの精巣を用いたRNA-seq解析、DNAメチル化解析を実施したが、特段変化を認めなかった。そこで、精子のタンパク質を用いたプロテオーム解析を実施し、いくつか、Ldhc欠損精子のほうで発現が低下しているタンパク質があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
体外受精による次世代への影響の確認をすすめるとともに、Ldhc欠損精子でみとめられているタンパク質の発現変化を、10個程度の候補因子に絞ってウェスタンブロットにより確認を行い、その意義を検討する。また、2-HGの作用点としては、DNAのメチロームとトランスクリプトームに目立った影響がなかったことから、RNAのメチル化の変化について検討をすすめる。RNAメチル化は、タンパク質の翻訳に関係しているとの報告があることから、候補因子のmRNAを用いたメチル化RIP解析なども実施する。
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Causes of Carryover |
マウス精巣のDNAメチローム解析を、東北大学医学部の共通利用の次世代シーケンサーのサービスを利用して実施した。そのための利用料金の引き落としが次年度(平成30年度)となったため。
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[Journal Article] Low-Dose Irradiation Promotes Persistent Oxidative Stress and Decreases Self-Renewal in Hematopoietic Stem Cells2017
Author(s)
Rodrigues-Moreira S, Moreno SG, Ghinatti G, Lewandowski D, Hoffschir F, Ferri F, Gallouet A-S, Gay D, Motohashi H, Yamamoto M, Joiner MC, Gault N, Romeo P-H
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Journal Title
Cell Rep
Volume: 20
Pages: 3199~3211
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Cysteinyl-tRNA synthetase governs cysteine polysulfidation and mitochondrial bioenergetics2017
Author(s)
Akaike T, Ida T, Wei FY, Nishida M, Kumagai Y, Alam MM, Ihara H, Sawa T, Matsunaga T, Kasamatsu S, Nishimura A, Morita M, Tomizawa K, Nishimura A, Watanabe S, Inaba K, Shima H, Tanuma N, Jung M, Fujii S, Watanabe Y, Ohmuraya M, Nagy P, Feelisch M, Fukuto JM, Motohashi H
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Journal Title
Nat Commun
Volume: 8
Pages: 1177
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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