2017 Fiscal Year Research-status Report
妊娠期におけるウイルス感染により規定される子孫自然免疫系維持機構について
Project/Area Number |
17K19559
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 太郎 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50456935)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 免疫寛容 / サイトカイン / LPS / マクロファージ / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠12.5日目のC57/BL6マウスに、合成二本鎖RNAアナログでありウイルス感染を模倣するPoly ICを腹腔内投与し、生まれた仔マウスにおける自然免疫応答の解析を行った。その結果、poly IC投与マウスより生まれたマウスの骨髄細胞をGM-CSF存在下で分化させた樹状細胞では、グラム陰性細菌の細胞壁成分であるリポ多糖(LPS)刺激後の炎症性サイトカインinterleukin-6(IL-6)やTumor necrosis factorの産生量が低下していた。このことから、poly ICの刺激を受けた母マウスから生まれた仔マウスでは、自然免疫応答が寛容化していることが示唆された。また、poly IC投与マウスより生まれた仔マウス由来のマクロファージを用いて同様の実験を行ったところ、サイトカイン産生の減少が認められ、このマウスでは広く自然免疫応答が低下していることが示唆された。これらのことから、poly IC刺激により次世代に生じる何らかの寛容機構が自然免疫細胞において誘導されていることが強く示唆された。これまで、免疫寛容の機構として、小分子RNAやエピジェネティック制御に加え、LPS受容体であるToll-like receptor 4の細胞表面発現の低下等が報告されている。そこで、まずエピジェネティック制御の関与を調べる為、ヒストン修飾関連分子7種類に着目した。現在、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3L、DNMT1、UHRF-1、TET1、TET2、TET3を欠損する細胞株を樹立中である。予備的ではあるが、脱メチル化関連酵素TET1を欠損した細胞において、LPS刺激後のIL-6の産生量が増大している知見を得たことから、この分子がLPSに対する寛容に関連していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Poly ICを投与した母マウスより生まれた仔マウスでは自然免疫担当細胞においてLPS刺激後の炎症性サイトカインの低下が認められたことから、何らかの免疫寛容が誘導されていることが示唆された。ヒストン修飾関連因子7つに着目し、これら遺伝子を欠損するマクロファージ細胞株の樹立を開始した。その中の一つ、脱メチル化関連酵素TET1を欠損した細胞では、LPS刺激後のIL-6の発現量が亢進していることを示唆するデータを得た。また、他の候補因子の欠損細胞株も着実に樹立が行われ、解析を開始できる段階にある。また、マウス個体において自然免疫細胞がどのように寛容型へと変化しているか、野生型仔マウスとPoly IC投与マウスの仔マウスからマクロファージを調整し、遺伝子発現変化の網羅的解析も開始した。また、腹腔、肺、腸管、脾臓、肝臓などに存在する組織特異的マクロファージの分布についてのFACS解析も行っており、これら解析を通してPoly IC投与が次世代の免疫系に及ぼす効果について解析している段階である。このように、本研究はおおむね当初の計画通りに進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
TET1以外の候補分子の欠損マウスも早急に樹立し、自然免疫応答について詳しく解析を行う。LPSに対する寛容に何らかの影響があることが示唆された分子については、欠損マウスの樹立を行い個体レベルでの解析を行う。まず、妊娠ヘテロマウスにpoly ICを投与を行い、そこから生まれた仔マウスより樹状細胞やマクロファージを取り出し、自然免疫応答についてサイトカイン産生を指標に詳しく解析を行う。また、炎症誘導型として知られるM1型マクロファージと炎症抑制型のM2型マクロファージの分化に影響があることも予想されることから、M1/M2マクロファージの分化や活性化に変化が欠損マウス内で生じているか解析を行う。また、野生型とTET1欠損細胞におけるDNAメチル化の状態を網羅的に解析し、寛容誘導の標的となる炎症関連因子、あるいはマクロファージや樹状細胞の分化に関与する因子の同定を目指す。また、LPSに対する寛容の一つの機構として、LPS受容体TLR4の細胞表面からの内在化が示唆されているが、我々はリソソームやエンドソームの酸性化維持機構が破綻すると、TLR4 の内在化が抑制され、この寛容が破れることを示している(Murase et al, J Immunol, 2018)。したがって、poly IC投与により仔マウスのTLR4の細胞内局在が変化している可能性も考えられることから、TLR4の細胞内局在の解析も行う。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Mitochondrial damage elicits a TCDD-inducible poly(ADP-ribose) polymerase-mediated antiviral response.2017
Author(s)
Kozaki T, Komano J, Kanbayashi D, Takahama M, Misawa T, Satoh T, Takeuchi O, Kawai T, Shimizu S, Matsuura Y, Akira S, Saitoh T.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 114
Pages: 2681-2686
DOI
Peer Reviewed
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