2017 Fiscal Year Research-status Report
骨免疫制御を可能にするインプラントナノ表面形態の探索
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17K19742
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 将博 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (90549982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | インプラント / ナノ形態 / メカノトランスダクション / 骨免疫 / インプラント周囲炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科用インプラント頸部に生じる周囲骨吸収は未だ決定的な解決策のない課題である.破骨細胞の前駆細胞となるマクロファージ(MΦ)はインプラント周囲骨吸収の発症に深く関与する.また,MΦはM1型あるいはM2型のサブタイプに分極し,歯周炎においては,M1型MΦが特異的に破骨細胞形成を抑制することが知られている.MΦの分極化は,リガンド刺激によって引き起こされるだけでなく,足場付着時の細胞内メカノトランスダクション機構を介した細胞形態変化によっても制御される.そのため,申請者は,MΦの分極を制御するナノ表面形態をインプラント頸部に付与することで,骨免疫環境を介して破骨細胞の形成を抑制し,インプラント頸部の骨吸収を防ぐ技術を着想した. 平成29年度では、平滑面(機械研磨面),ミクロ粗面(酸処理面)および実験的ナノ粗面のチタンインプラントをラット上顎骨第一大臼歯抜歯後の歯槽骨に埋入し,4週間の待機期間を経て骨結合を確認した後に,インプラント周囲炎モデルの構築を試みた.インプラント埋入4週後に,4-0絹糸をインプラント頸部に結紮し,4週間留置することによりインプラント周囲炎を惹起させた.マイクロCTによるインプラント周囲骨吸収の定量的評価およびインプラント周囲組織の脱灰および非脱灰切片による組織学的評価を行った.その結果,3-0絹糸の結紮により,破骨細胞形成を伴うインプラント周囲骨吸収が惹起させることに成功した.また,インターフェロンγと腫瘍壊死因子αまたはインターロイキン4を用いたMΦ細胞株のM1およびM2への誘導に成功し,マウス単球・MΦ用細胞株や破骨細胞前駆細胞を用いた細胞培養試験の準備が整った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インプラント周囲炎のラット上顎モデルを成立することができた.また,インプラント周囲組織の脱灰切片の作製に成功した.現在,インプラント周囲組織の炎症状態や破壊様相,破骨細胞の出現度およびインプラント周囲骨吸収の程度に関して,各種チタンインプラント表面性状で違いがみられるかどうかを組織学的に検証中である.また,マウス単球・マクロファージ用細胞株や破骨細胞前駆細胞を用いて細胞培養試験を行い,M1およびM2マーカーの発現誘導や破骨細胞誘導性に関して,各種チタン表面性状で違いがみられるかどうかを分子生物学的に検証中である.
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Strategy for Future Research Activity |
ラット上顎第一大臼歯相当部の顎堤に各種表面性状のミニインプラントを埋入し,4週後にインプラント頸部に4-0絹糸を結紮し,4週間留置する.その後,マイクロCT解析により骨吸収量を,脱灰切片のヘマトキシリン・エオジン染色やマッソン・トリクローム染色,TRAP染色,TUNEL染色およびin situハイブリダイゼーションにより破骨細胞出現量やMΦサブタイプの分布,周囲組織の破壊程度を分析し,各種表面性状の違いによるインプラント周囲炎に関わる骨免疫機構におよぼす影響を組織学的および組織形態計測学的に検証する予定である.また,マウス単球・マクロファージ用細胞株であるJ774A.1細胞や破骨細胞前駆細胞であるRAW264.8細胞を各種チタン表面性状上で培養し,M1およびM2マーカーの発現や破骨細胞誘導性を,リアルタイムPCRやウェスタンブロッティング分析,転写因子のレポーターアッセイ,TRAP染色などにより評価する予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)実験条件の確立がやや遅れたことや主な支出対象であった実験機器の納品予定日が年度内に間に合わなかったことにより,次年度使用額が生じた. (使用計画)平成30年度の実験計画に組み込み,必要な実験機器の購入,組織学的評価および細胞培養試験に関連する試薬や消耗品の購入に充てる予定である.
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