2017 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ教育の基盤整備のための養護教諭を対象とした遺伝教育プログラムの開発
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17K19815
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川崎 裕美 広島大学, 医歯薬保健学研究科(保), 教授 (90280180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中込 さと子 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10254484)
柊中 智恵子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 准教授 (60274726)
山崎 智子 (森脇智子) 広島大学, 医歯薬保健学研究科(保), 助教 (20512510)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝教育 / 養護教諭 / インクルーシブ教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
出生前診断が普及し、命の選別につながることから、障がい者に対する倫理的課題が大きくなっている。文部科学省は障がいのある者とない者が可能な限りともに学ぶ仕組みづくり(インクルーシブ教育)に取り組んでいる。このインクルーシブ教育は、社会における差別撤廃、相互理解を促進するものである。出生前診断の問題の根底にある障がいに対する偏見や無理解を是正する役割を持つ。インクルーシブ教育を推進するためには、まず、遺伝教育を基盤としたヒトの多様性を理解するための養護教諭を対象としたプログラムが必要であると考え、本研究では、これらを開発することを目的とした。 本年度は、まず現在の高等学校の遺伝に関する教育内容を分析し、現在の教員と児童生徒の状況の課題検討、養護教諭が職務の中で出会う多様性理解に関する場面や状況について半構成面接を実施した。 教育内容の分析では、生物としての遺伝教育は専門的でありかなり詳し内容となっている。一方で、他の科目との関連が認められない状況があった。既存調査との比較では、遺伝子の研究の進展に伴い年々内容が専門化しており、既卒者の知識との乖離が大きいことが推察された。養護教諭を対象とした半構成面接は、中学校養護教諭のグループフォーカスインタビュー、特別支援学校の養護教諭を対象とした個別面接調査を実施している。逐語録を作成し、特徴を分析している。グループフォーカスインタビューでは、養護教諭が児童生徒本人、保護者、教員、同級生等という立場の違う対象によって説明や関わり方に困惑していることが明らかになった。多様性に関する知識だけでなく、対象の立場の理解が重要であることが示唆された。しかしながら、国民の遺伝子に関わる多様性の理解が進めば、このような困難は解消すると考えられた。したがって、国民の多様性理解を進めるための学校教育、特に養護教諭の役割は重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高等学校等の遺伝に関する教育内容の調査と整理、文献整理を終了した。現在教育を受けている生徒と、指導する者の遺伝に関する知識が異なるため、遺伝教育としての課題は多い。多様性の理解のためには、道徳や倫理教育との連携、指導する者自身がゲノム学習を進める必要性が高い。 養護教諭を対象とした面接調査はほぼ終了し、逐語録の作成、カテゴリ抽出を進めている。グループフォーカスインタビューでは、養護教諭が、児童生徒本人、保護者、教員、同級生等という対象の立場の違いによって、対応に困難感を持っていることが明らかになった。これらの得られた知見を論文としてまとめている。個別面接調査の結果は、現在分析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、養護教諭養成課程の学生について学習内容を調査する。聞き取り調査およびシラバスの調査を実施する。また、看護師・保健師養成との違いも検討し、養護教諭養成課程の特性を検討する。また、収集した児童生徒の教育内容から、人の多様性を理解するためのゲノム理解の進め方を検討する。これまでにそれぞれが分担して行ってきた研究成果をとりまとめ、最終年度のプログラム実施に向けた準備を行う。そのための打ち合わせおよび検討会議を実施する必要がある。
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Causes of Carryover |
面接調査の実施が先方の都合によって、年度末および4月実施となったため、逐語録の作成費用、謝金、論文作成にかかる校閲、投稿費用が繰り越された。本年度は、論文としてまとめた知見の投稿、現在分析中の結果を研究成果として国際学会に発表する。そのため、研究代表者、研究研究協力者の旅費や参加費の支出を計画している。また、教育プログラムを検討するために効果的な指導を模索していることから、物品費、プログラムに関する養護教諭の意見聞き取りのための謝金増加が見込まれる。
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