2019 Fiscal Year Research-status Report
脳の局在とネットワークの発達による早期産児・正期産児の処置痛の解明と緩和法の開発
Project/Area Number |
17K19818
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
祖父江 育子 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (80171396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 未緒 広島大学, 医系科学研究科(保), 准教授 (80611318)
竹中 和子 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (90227041)
植松 裕子 人間環境大学, 看護学部, 講師 (00808909)
桐本 光 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (40406260)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 早期産児 / 疼痛 / 脳 / 誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脳の感覚領域(体性感覚野、聴覚野)に着目し、早期産児・正期産児の処置に伴う疼痛の侵襲度を明らかにすること、そして、採血や処置等の疼痛を緩和し、ホメオスターシスを維持し、発達を促すケアを開発することである。研究グループは、有効な非薬理的疼痛緩和法がなかった早期産児の処置痛(踵穿刺)に対し、新介入法{音楽、おしゃぶり、facilitated tucking (四肢を体幹に引き寄せ抱く)とholding (包み込み)}を実施し、強い鎮痛効果と早期の鎮痛効果、ホメオスターシスの維持効果を確認した(Uematsu et al. 2018)。 その成果を踏まえ、非薬理的介入による疼痛緩和を立証するために、新生児の疼痛刺激における脳の侵害受容脳活動に対して、より鋭敏に反応を示す誘発電位(脳波)に着目し、疼痛の測定指標としての研究を進めている。新生児および健康成人ともに、疼痛刺激による誘発電位は、電極部位Czにおいて、疼痛刺激後に有意なネガティブ波およびポジティブ波(N2-P2)を認めるが、新生児では、N2-P2に続き、有意な第二の波形(N3-P3)の誘発電位を得ている。疼痛刺激による誘発電位の違いが、新生児と成人による違いか、穿刺部位による違いかは不明である。 そこで、研究グループは、新生児のかかと穿刺における疼痛の特性を明らかにするために、まず、健康成人の穿刺痛を誘発電位で測定する。皮膚穿刺による疼痛の測定を可能にするため、従来分離困難とされる痛覚由来Aδ神経線維成分と、触覚由来Aβ神経線維成分の分離抽出を、独自に開発した機器を用いて、健康成人の皮膚穿刺刺激において行っている。 誘発電位による新生児のかかと穿刺痛の実証(Aδ神経線維成分の抽出)は、新生児の疼痛緩和法や低侵害受容の機器の開発を推進するので、極めて臨床的意義が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究グループは、非薬理的介入による疼痛緩和を立証するために、疼痛の測定指標として、侵害受容脳活動に対しより鋭敏に反応を示す誘発電位(脳波)に着目し、研究を進めている。新生児および健康成人ともに、疼痛刺激による誘発電位は、電極部位Czにおいて、疼痛刺激後に有意なネガティブ波およびポジティブ波(N2-P2)を認めるが、新生児では、N2-P2に続き、有意な第二の波形(N3-P3)の誘発電位を示す。 そこで、研究グループは、新生児のかかと穿刺における疼痛の特性を明らかにするために、表皮内電気刺激による痛覚を誘発電位によって示した先行研究(Inui et al., 2002)に基づき、従来分離困難とされる痛覚由来Aδ神経線維成分と、触覚由来Aβ神経線維成分の分離抽出を試みた。独自に開発した機器を用いて、健康成人12名の上肢の遠位と近位に表皮内電気刺激を行い、2刺激箇所の反応速度の差から算出した伝導速度は、Aδ神経線維の伝導速度と一致していた。 Inuiの表皮内電気刺激は、Aδ神経線維成分を抽出するために、Aδ神経線維の自由終末が存在する表皮内0.2mmに位置している。そこで、研究グループは、表皮内電気刺激の知見に基づき、穿刺針が表皮内0.2mmに位置する独自の機器を製作し、触覚由来Aβ神経線維の活性化を減弱して、痛覚由来Aδ神経線維成分を抽出予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究グループは、皮膚穿刺による疼痛を、痛覚由来Aδ神経線維成分の単離により実証することを目指している。 現在、表皮内電気刺激の知見に基づき、穿刺針が表皮内0.2mmに位置する独自の機器を製作し、触覚由来Aβ神経線維の活性化を減弱して、痛覚由来Aδ神経線維成分を抽出予定である。今後の研究は、①皮膚穿刺刺激による痛覚反射を明らかにするために、健康成人の手背に、穿刺刺激、痛覚刺激、触覚刺激を各10回行い、第一背側骨間筋の筋電図を比較する。次に、②皮膚穿刺刺激によるAδ神経線維の活性化を明らかにするために、健康成人への皮膚穿刺刺激による2刺激間伝導速度を測定する。健康成人の上肢の遠位部位と近位部位に穿刺刺激を各10回程度行い、測定した誘発電位から伝導速度を計算し、Aδ神経線維の抽出によって、穿刺痛を実証予定である。
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Causes of Carryover |
より鋭敏に疼痛反応を示す電気生理学的指標である誘発電位(脳波)を測定する機器(生体信号収録装置システムMP6000(HS))の開発遅延により、研究実施が遅れたためである。 研究費は、痛覚由来Aδ神経線維成分の単離による皮膚穿刺痛の実証研究に用いる。皮膚穿刺刺激による痛覚反射を第一背側骨間筋の筋電図の測定で実証し、皮膚穿刺刺激によるAδ神経線維の活性化を、健康成人の皮膚穿刺刺激による2刺激間伝導速度の測定で実証予定である。
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Research Products
(4 results)