2017 Fiscal Year Research-status Report
乳腸相関の実態解明と腸管から乳腺への遠隔制御技術の確立
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17K19882
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10708001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 準一 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (60280880)
米山 裕 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10220774)
北澤 春樹 東北大学, 農学研究科, 准教授 (10204885)
麻生 久 東北大学, 農学研究科, 教授 (50241625)
渡邊 康一 東北大学, 農学研究科, 助教 (80261494)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 乳腺 / 腸管 / 免疫 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
「乳腸相関」とは、応募者がこれまでの研究を通して得られた成果をもとに提唱する、乳腺と腸管を繋ぐ免疫学的および微生物学的相互支配関係のことであり、哺乳動物特有の生命現象として、哺育を支える原動力になっていると推測される。一方で、妊婦の1/3が、またウシでは437,472件/年(乳牛4頭の内の1頭)もが乳腺炎(ヒト)もしくは乳房炎(ウシ)を発症しており、このことは、哺育や牛乳生産における大きな問題となっている。ヒトの乳腺炎やウシの乳房炎治療に、抗生物質が広く用いられているが、近年問題となっている薬剤耐性菌の発症のリスクを回避するためにも、それに代わる予防型の技術開発は必要不可欠である。申請者は、「乳腸相関」の破綻は、乳腺炎や乳房炎を引き起こす一つの大きな要因であり、また「乳腸相関」の質の向上により、良好な哺育や牛乳生産が可能になることを科学的に実証すべく、本挑戦的研究(萌芽)を実施している。 具体的な研究は、マウスを用いた動物実験とヒトサンプルを用いた臨床評価を通して実施する。先行しているマウスを用いた評価では、妊娠・授乳中のマウスに、免疫賦活化能を有した乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus CRL1505株)の経口投与および、腸内微生物環境の攪乱を目的とした抗生物質投与による乳腺免疫・微生物環境に与える影響を解析することで、乳腺と腸管との関連を精査している。これまでに得られている成果として、妊娠・授乳期のマウスに抗生物質を投与することで、乳腺での免疫レベル(IgA産生)が有意に低下することを見出しており、抗生物質投与によって影響を受けた腸管微生物の特定と乳腺で認められる免疫応答の特異性を解析するための試験を継続している。ヒトサンプルを用いた試験は、倫理委員会での審査がほぼ終了し、来年度より実施することが決定しており、研究期間内での成果の取得が可能な状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用いた動物試験と、ヒトサンプルを用いた臨床試験を予定している。動物試験は、当初予定していた乳酸菌を用いた試験に加え、抗生物質投与試験も実施することで、予定以上の研究成果を得ている。ヒトサンプルを用いた臨床試験は、倫理委員会での承認が必要でることから、平成30年度のスタートを予定しているが、期間内に研究成果を取得できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトサンプルを用いた臨床試験では、妊娠期(妊娠20週および36週)および授乳期(産後4週)の同一被験者より糞便と乳汁(乳汁は産後4週のみ)を採取する。その後、得られたサンプルより微生物由来DNAを抽出し、PCRにより16sリボソームRNA遺伝子を増幅した後、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析に供することで微生物叢解析を行う。さらには、腸内・乳汁中の微生物叢の関連性を明らかにすべく、微生物集団解析ソフト(QIIME)を用いた主成分解析を実施する。 マウスを用いた動物実験では、抗生物質投与によって影響を受けた腸管微生物の特定と乳腺で認められる免疫応答の特異性を解析する。また、乳酸菌投与による影響の有無も、引き続き、解析していく。
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Causes of Carryover |
ヒト臨床試験の開始が平成30年度になったため。倫理委員会でほぼ承認済みであることから、計画は問題なく実施可能な状況である。
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