2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a Quantitative Method of Nano-plastics Formation Potential from Daily Use Products and its Application to Environmental Samples
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17K20062
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | マクロプラスチック / ナノプラスチック / 生成ポテンシャル / 日用品 |
Outline of Annual Research Achievements |
「下水処理場の各処理工程における粒径100 μm以上のマイクロプラスチックの存在実態調査」と「下水処理場における粒径100 μm以上のマイクロプラスチックの挙動把握」では、凝集剤添加多段硝化脱窒法および砂ろ過法(275,000 m3/day)のA下水処理場の各処理工程間において、目開き100 µmのプランクトンネットに102~3,780 Lの水試料を通水し、酸を用いた前処理を行った後、実体顕微鏡およびFT-IRを用いて、粒径の計測および成分分析を行った。さらに流量情報を掛け合わせることで、マイクロプラスチックの日負荷量を推計した。その結果、マイクロビーズや破片状のポリエチレンなどが検出された。本処理場へは一日1億2,000万個のマイクロプラスチックが流入していると推計された。処理工程において99.64%のマイクロプラスチックが除去され、43万個が下水処理場を通過し放流されていると推定された。生物反応槽と最終沈殿池では返送汚泥を介してマイクロプラスチックが循環していることが示唆された。 「水環境中のマイクロプラスチックの粒径に着目した多環芳香族炭化水素類の吸着特性の検討」では、Anthraceneの初期濃度が1 mg/Lとなるよう超純水で調整した試験瓶に、粒径75 μm以下、250~500 μm、3 mmのポリエチレンを0~720 mg/Lとなるように添加した。試験瓶を25℃、120 rpmで72時間振とうさせ、前処理の後、GC-MS/MSを用いてAnthraceneを測定した。吸着試験の結果、マイクロプラスチックの粒径が小さいほどAnthraceneの吸着能力が高く、マイクロプラスチックの表面積と吸着量は比例した。 その他、査読付き投稿論文1編を水環境学会誌に投稿し、登載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに100 μm以上のマイクロプラスチックの計測・同定手法を確立しており、同時に吸着したマイクロプラスチックから微量化学物質を検出した。全国の内湾、湖沼の37.6%の魚の消化管にマイクロプラスチックが存在する結果を示し、さらにパーソナルケア製品中のマイクロプラスチックの中央粒径が約200 μmであり、1製品あたり62万個のマイクロプラスチックが存在することを示した。現在は、顕微FTIRを用いて10 μmのマイクロプラスチックの計測・同定方法の開発に着手している。底質中のマイクロプラスチックについては、10 μmまでの計測・同定手順を明らかにした。 マイクロプラスチックの標準品に波長237.5 nmの紫外線を240時間照射し、照射前後の比表面積を測定した。照射前は0.063 m2/gであった比表面積が、240時間照射後には0.088 m2/gと約1.4倍に増加した。 粒径の異なるマイクロプラスチック標準品を用いて、Anthraceneを対象とした回分式吸着試験を行った。さらに、琵琶湖・大阪湾で採取したマイクロプラスチックを粒径・成分ごとに分け、PAHs吸着量を測定した。マイクロプラスチック標準品と実環境中サンプルにおいて、PAHs吸着量と比表面積の関係から、吸着特性を比較し検討した。粒径4.75 mm以上のポリエチレンへのΣ 27PAHs含有量は270 ng/g-dry、粒径2~4.75 mmでは1,220 ng/g-dry、粒径850 μm~2 mmでは1,260 ng/g-dry、粒径315~850 μmでは12,080 ng/g-dryであった。成分別の吸着量は、ポリプロピレンはポリエチレンと同程度であり、大阪湾のポリスチレンへのPAHs吸着量は、ポリエチレンに比べ1~2桁程度高かった。
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Strategy for Future Research Activity |
粒径10 μm以上のマイクロプラスチックの計測・同定については、顕微FTIRを駆使した方法を検討中である。想像以上の個数のマイクロプラスチックが底質から検出されたことから、すべてのマイクロプラスチックを対象に、計測、同定まで行うには非常に長時間を要することが分かってきた。そこで、染色法を用いて一部のマイクロプラスチックを染色し、蛍光顕微鏡を用いることで、計測の一部を自動化することができる方法の検討を進めたいと考えている。本方法を用いることで理論的には粒径500 nm以上のマイクロプラスチックの計測が可能になると考えている。本方法の開発が予定通りに進んだ場合は、洗濯排水中のマイクロファイバーなどの分析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
<理由> 標準試薬を節約して利用した結果、経費の一部を次年度に繰り越すこととなった。また、購入予定の顕微鏡用蛍光フィルタが、受注生産であったため、想定よりも納品に時間がかかることがわかった。そのため、次年度に繰り越すこととなった。 <使用計画> 標準試薬が足りなくなった時期に、標準試薬類の購入を中心に消耗品として購入を進める。顕微鏡用蛍光フィルタは、年度が明けてすぐに発注を進めている。
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