2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a vectorial induction device for biomedical tissues using high-resolution magnetic circuit
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17K20081
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (10206766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30302152)
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50400255)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | γ相 / 窒素 / 固溶 / オーステナイト / フェライト / 磁気回路 / レーザー / 組織誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者らは、窒素固溶非磁性ステンレス鋼にレーザー描画することで局所的磁場を高磁束密度で供給できる磁気回路の開発に成功し、組織誘導デバイスや磁性アタッチメントとして応用することを試みてきた。その過程で、静磁場刺激による骨再生の促進や血管誘導の可能性を得たため、静磁場刺激で誘導方向を高精細に制御できる組織誘導デバイスの開発を目指す。 30年度は、組織誘導に最適な磁気回路をつくるため、磁束の方向や密度を高精細にデザイン制御した静磁場を供給できる磁性/非磁性ハイブリッド素材を同一素材で実現することを試みた。29年度から行ってきたシミュレーションによる磁気回路の設計を基に、磁気回路の素材となる窒素を固溶させた非磁性のオーステナイトステンレス鋼にレーザーを照射し、非磁性(γ相)から磁性(α相)に変態させる実験を継続して行った。 基材となるフェライト系ステンレス鋼のSUSXM27(Fe-26Cr-1Mo)を1150℃の高真空(5X10-2Pa)中で30分加熱後、0.1MPaの窒素ガスを導入し、厚さ0.3mmの板状試料を3時間加熱すると、すべてγ相に変態した板状試料を得ることができ、窒素固溶によるオーステナイト化(非磁性化)を定常的に付与できるプロトコルが完成した。次に、レーザー描画により同一素材から磁性/非磁性ハイブリッド素材の試作を行い、設計に合致した描画の可能性を検討した。補綴装置用のレーザー溶接機を用いてレーザー照射を試みたが、融解しない範囲ではγ相からα相への変態が生じなかったが、一部融解することで変態が生じ、レーザー照射部が非磁性から磁性に変化して磁性/非磁性ハイブリッド構造を得ることが出来た。しかし、一部融解によって窒素ガスの気泡が発生すること、冷却過程で板状試料が変形する問題が生じた。照射条件を工夫することで前者の改善は進んだが、後者は次年度の課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯科用磁性アタッチメントのヨーク材に用いられている磁性を示すフェライト系ステンレス鋼のSUSXM27(Fe-26Cr-1Mo)に窒素を固溶させ、非磁性を示す窒素固溶オーステナイト系ステンレス鋼の製作を定常的に遂行できるプロトコルを完成した。昨年度は、大型(40mm×10mm×1mm)のSUSXM27ステンレス鋼を試料としたが、30年度では小型化を想定し、0.3mm厚の薄板を準備し、0.1MPaの窒素雰囲気中で1150℃に3 時間加熱後、40L/minの窒素ガスを吹き付け冷却した。すべてがγ相の非磁性ステンレス鋼であることをX線回折装置で確認した。この薄板の試料にレーザー照射し、一部融解する照射条件でγ相からα相に変態できることがわかったが、固溶した窒素が気泡となって現れ、破裂することで薄板に穴が空いてしまう不備が生じた。予定がであったが、この対策として、レーザー照射条件をパルス幅、パルス間隔、照射エネルギーをパラメータに定め、照射実験を追加したため、予定の進度からやや遅れを生じることになった。この問題については、レーザー照射条件を適切に設定すれば、対応可能である結果を得ている。一方、一部融解による変形については、形状によって変わるため、対策を考案している状況であり、レーザー描画による磁気回路の描画精度を確認まで到達できず、計画通りに実験を遂行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー照射による非磁性から磁性への変態に関して、融解しない程度のレーザー照射では、一旦固溶した窒素を瞬時に追い出すことができず、γ相からα相への変態を十分に起こすことができなかった。そこで、推進方法を一部変更し、表面層の一部を融解することでα相を得ることが出来た。当初の予定では、表面を融解することなく描画することを計画していたが、表面の極上層部をわずかに融解することで、窒素放出による気泡の発生と融解による変形の対策が必要となった。前者については、30年度に実験した照射条件でほぼ対応できているが、変形対策を講じる必要がある。この変形の主な原因は、一部融解による凝固収縮であるため、その収縮を相殺する方法として、表裏の両者から同じ部位をレーザー照射し、ほぼ同じ凝固収縮を与えて変形を抑制する方針に変更することとした。すなわち、レーザー描画を裏表に施すことで対応する。裏からのレーザー照射が不可能な形状については、別途対策を講じることとする。時間的な遅れを取り戻すため、本研究課題に費やす実験時間を幾分増加することで対応する。
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Causes of Carryover |
有限要素法プログラムにより、磁気回路のシミュレーションを行っているが、現用の計算機では要素数を増やすことができないため、新規計算機購入に使用する予定であったが、予定よりも低額の計算機で機能したため、購入費が抑えられ次年度使用額が生じた。現用のシミュレーションソフトは、力学中心の有限要素法なので、磁場解析を強化したオプションの購入に使用予定である。
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