2020 Fiscal Year Research-status Report
Do microbiomes involve in the toxicological mechanisms of Pb in low concentration / long term chronic Pb exposure?
Project/Area Number |
17KK0009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 翔太 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (90647629)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 鉛汚染 / 腸内細菌叢 / 低濃度暴露 / 慢性暴露 / 毒性発現 / カブウェ鉱床 / 次世代シークエンス解析 / フォロアップ研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低濃度・中濃度・高濃度の鉛濃度が検出された子供を対象に、血中・尿中・糞便中の鉛濃度の推移および糞便を用いた腸内細菌叢解析を行い、鉛暴露が腸内細菌叢に及ぼす影響を解明する。本事業中にザンビアに5回渡航しカウンターパートのJohn Yabe講師とディスカッションおよびサンプリングを実施した。現地で必要となるゲノム抽出装置、PCR装置などのラボのセッティングは初年度前半の渡航で完了した。約800名の子供から血液尿、および糞便を収集した。現地クリニックにおけるオンサイト血液中鉛濃度測定を終了し、低濃度から高濃度の広範囲における血中鉛濃度を示す検体を集めた。糞便由来の腸内細菌叢解析を実施するためザンビア大学獣医学部に設置したラボにおいて細菌ゲノムを抽出した。これらの試料を対象に金属濃度および細菌叢解析を実施し、大規模なデータ取得が完了した。現在、これらのビッグデータを解析している段階である。対象を人だけでなく、人と生活圏を共有する野生ラットにも拡大し、血液、各種臓器、胃内容物、糞便を採取し、人では不可能な臓器中の金属濃度と細菌叢との関連を明らかにする。共同研究の重要な目的である途上国における環境学・毒性学の研究者育成のためにザンビア大学より研究者を招聘し技術移転を実施した。招聘者はザンビア大学の学生に教育・指導を実施しており、当該分野の推進に貢献している。2019年度より治療プロジェクトを遂行する世界銀行(World Bank)の担当者と実施計画のディスカッションを実施した。本共同研究のカウンターパートであるJohn YabeはWorld Bankプロジェクトにおけるメンバーでもあり、当該研究との連携の役割を担うことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCOVID-19の影響により予定していた渡航は出来なかったが、ザンビア側カウンターパートと、4回のオンライン会議・Progress Reportミーティングを実施し、既に北海道大学に輸入済みの検体を用いた測定を行った。 鉛暴露にもっとも脆弱な子供を対象としたフォローアップ研究を実施し、神経・知的発達レベルやIQ値との関連を前向きコホート研究により解析し、鉛曝露が子供の知的発達に負の影響を及ぼす可能性を明らかにした。現在詳細な統計学的解析を追加で行い論文を作成中である。さらに、約1250名を対象に実施した血液鉛濃度の解析や、その標本母体から約500名をランダム抽出したSub-sampleを対象に実施した主成分分析や判別解析、重回帰分析などの多変量解析手法によるデータマイニングを行い、どの要因が複合的に影響を及ぼしているのか解明し、肝臓や腎臓などの臓器毒性パラメーターやゲノムメチル化との統計的に有意な負の影響を解明した(今年度だけでNakata et al., 2021, Yohannes et al., 2021など7報が受理された)。低濃度・中濃度・高濃度の鉛濃度が検出された子供を対象に、血中・尿中・糞便中の鉛濃度の推移および糞便を用いた腸内細菌叢解析を行い、鉛暴露が腸内細菌叢に及ぼす影響の解析を進めた。さらに、本年度は血中・尿中・糞便中の鉛濃度に加えて、マグネシウム、マンガン、鉄、カドミウム、ヒ素、銅、亜鉛などの他の金属濃度も分析し、鉛以外による腸内細菌叢への影響を統合的に解析することを試みている。これらの金属による複合影響については近年特に重要性が指摘されつつあり、本事業で所有するアフリカ地域の検体から初めて成果を明らかにすることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて統計学的解析を進め、学術論文として更なる成果の取りまとめを行う。
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