2018 Fiscal Year Research-status Report
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17KK0051
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 充 九州大学, 法学研究院, 教授 (70386811)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 公共の平穏 / 社会法益 / 刑事法制史 / 刑事立法 / ドイツ刑法 / 比較刑事法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、基課題である「「社会の平穏を害する罪」の現代的再構築」(基盤C、課題番号16K03368)に基づいて、ドイツやオーストリアにおいて見られる「社会の平穏を害する罪」を、現代社会にふさわしい形で再構成し、日本での新たな立法提言の足掛かりとするために、とりわけドイツの刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」の章における犯罪類型について、ドイツにおいて在外研究を行い、集中的に文献・資料収集を行いつつ、共同研究者であるドイツの大学教授との議論・検討を行うものである。 平成30年度は、平成31年度に行われる予定のドイツでの在外研究のための準備として、9月にドイツに渡航して、在外研究の受け入れ先教員であるクリスチャン・イェーガー教授(エアランゲン=ニュルンベルク大学)と在外研究のための打ち合わせを行った。これに基づいて、平成31年度に1年間ドイツで在外研究を行い、当該各犯罪類型の規定に関して研究を進めるための環境を整えることができたといえる。 また、本研究を始めるきっかけとなった、日本における「業務妨害罪」の運用状況に関して、とりわけ虚偽犯罪予告行為に関して警察に対する業務妨害罪を認める際の問題点を再確認する論文を執筆した(野澤充「虚偽犯罪予告行為と業務妨害罪・再論」法政研究85巻3・4合併号285頁以下)。日本の業務妨害罪自体の分析・検討としてはまだ十分なものではないが、当該犯罪類型の、現時点での最も大きな問題点を明確化することができたものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、基課題を達成する目的で、比較対象となるドイツの各則規定の犯罪類型を分析・検討するために在外研究によって集中的に文献・資料収集を行いつつ、共同研究者であるドイツの大学教授との議論・検討を行うことをその内容としており、平成30年度はその在外研究のための準備段階としての年度にあたる。諸事情で書類手続が遅れるなどしたが、課題研究そのものに関しては、在外研究のための打ち合わせを在外研究受け入れ先の教授と行うことができており、また当該研究のきっかけとなった業務妨害罪に関する論考(野澤充「虚偽犯罪予告行為と業務妨害罪・再論」法政研究85巻3・4合併号285頁以下)も公表できており、予定されていたとおりの内容を進めることができている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、いよいよ本研究のメインとなる在外研究を行う年度であり、比較法の対象となるドイツの刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」の章における各犯罪類型について集中的に資料収集を行い、分析・検討して、在外研究受け入れ先教員であるイェーガー教授と議論・検討を行う段階に入る。その際には、①基課題との関連から、各犯罪類型の分析に際して「歴史的観点」からの検討を行う必要があるものと考える。「なぜそのような犯罪類型が現在のような形で作られたのか」ということが、当該規定の存在意義として重要であると考えるからである。さらに②本研究が「刑法各則に関する比較法研究」の足掛かりとなるものであるという観点からは、各則の各規定がどのような行為態様を、どのような趣旨で処罰しようとしているのかに関して、日本とドイツの差異を浮き彫りにして比較対照する、という比較法の方法論に関する基礎研究としての意義も前提にすべきものであると考える。
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Research Products
(1 results)