2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17KK0051
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 充 九州大学, 法学研究院, 教授 (70386811)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 公共の平穏 / 社会法益 / 国家法益 / 刑事法制史 / 刑事立法 / ドイツ刑法 / 比較刑事法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、基課題である「「社会の平穏を害する罪」の現代的再構築」(基盤C、課題番号16K03368)に基づいて、ドイツやオーストリアにおいて見られる「社会の平穏を害する罪」を、現代社会にふさわしい形で再構成し、日本での新たな立法提言の足掛かりとするために、とりわけドイツの刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」の章における犯罪類型について、ドイツにおいて在外研究を行い、集中的に文献・資料収集を行いつつ、共同研究者であるドイツの大学教授との議論・検討を行うものである。 平成31年度は、予定されていたドイツでの在外研究を年度全体において行った。在外研究の受け入れ先教員はエアランゲン=ニュルンベルク大学のクリスチャン・イェーガー教授であり、エアランゲンに平成31年4月1日から令和2年3月19日まで滞在し、大学に個室の研究室を与えられて研究を行った。具体的にはドイツ刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」にある犯罪類型について、その規定の意義を総合的に分析した。ただ、当該各則第7章がかなり雑多な犯罪類型で構成されていることが分かり、「そもそもなぜこの各則第7章がこのような多様な犯罪類型で構成されることになったのか」を明らかにするべく、歴史的・法制史的観点からドイツ刑法典の成立過程を追うことを中心に進め、この結果ドイツ刑法典各則が国家法益に対する罪(第1章から第7章まで)と、それ以降の犯罪類型とで異なる編纂過程を辿ったことが明らかになった。しかし現在のドイツにおける解釈論的分析については今後の課題となった。 また資料収集の観点においても、必要最低限の文献収集はできたものの、コロナウイルスの影響により3月にエアランゲン=ニュルンベルク大学図書館が全面閉鎖される等したため、完全なレベルでの資料収集ができず、令和2年度においても継続してこれを進める必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、基課題を達成する目的で、比較対象となるドイツの各則規定の犯罪類型を分析・検討するために在外研究によって集中的に文献・資料収集を行いつつ、共同研究者であるドイツの大学教授との議論・検討を行うことをその内容としており、平成31年度はその在外研究を実際に実施する年度であった。 在外研究そのものはきちんと実施することができ、その際に「犯罪類型の存在意義」は当該規定の立法時の議論を前提にせざるを得ないことから、歴史的・法制史的観点からの分析・検討が研究の中心となり、この結果、研究対象であるドイツ刑法典各則第7章「公共の秩序に対する犯罪行為」が特殊な編纂過程を辿ったことが明らかになったものの、ドイツ学説の現在の解釈論的観点からの分析・検討が十分には行えなかった。 また文献・資料収集に関しても、必要最低限の部分については入手できたものの、発展的・応用的な部分の文献については、コロナウイルスの影響で大学図書館が閉鎖されてしまったこともあって十分には確保できず、令和2年度も継続する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は本国際共同研究の最後の年度であり、本研究によって得られた成果を明らかにして公表していく段階となり、すなわち比較法の対象となるドイツの刑法典各則第7章の「公共の秩序に対する犯罪行為」の章における各犯罪類型についての検討・分析を公表していくことになる。ただし、歴史的・法制史的観点からの分析・検討については論文を構成して公表を始める段階にあるが、前述のとおり解釈論的観点からの分析・検討は十分には進められておらず、これを進めて公表にまで到達する必要がある。 また文献・資料収集についても十分な状態ではないため、令和2年度も引き続きこれを進めていく必要があると考える。 さらに国際共同研究という観点からは、平成31年度の在外研究受け入れ先教員であるクリスチャン・イェーガー教授(エアランゲン=ニュルンベルク大学)を日本に招致して講演を依頼したいと考えている。ただこれについては令和2年4月現在でもコロナウイルスによるドイツ・日本間の渡航がほぼ難しい状況にあり、場合によってはイェーガー教授の日本語版著作集を出版して、その際の出版助成等で代替する可能性も検討している。
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