2021 Fiscal Year Research-status Report
領土海洋問題における裁判による紛争処理の機能と限界
Project/Area Number |
17KK0054
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
許 淑娟 立教大学, 法学部, 教授 (90533703)
|
Project Period (FY) |
2018 – 2022
|
Keywords | 領域法 / 海洋法 / 紛争処理 / 国際裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
共同研究期間終了し帰国後、フォローアップのための再延長を申請した本年度は、前年度に引き続き、個別の事件判決を詳細に検討し、研究会合を通じて、判決の解釈、意義、その帰結について議論を加えた。 本年度前半には、昨年度に参加した海洋法に関するシンポジウムおよびその際に行った研究打ち合わせの成果を活字として公表することができた。これは、日本の海洋科学調査に関する慣行を紹介するというものではあるものの、未境界画定における沿岸国の行動に関する判例上の蓄積が、裁判を離れた具体的な場面における国家の実行にどのように影響を及ぼすかを示すものであり、本研究課題の目的に一つである領土海洋問題における裁判の機能と限界を明らかにするものといえよう。 さらに、本年度後半も引き続き参加した海洋法に関する国際シンポジウムにおいては、国際海洋法裁判所の裁判官をはじめ、海洋法の実務者たちから、国家管轄権外の生物多様性の保全では国際公益あるいは一般利益がかかわることから国家対国家による紛争処理手段の俎上にのぼることが想定しづらいという見通しについて、意見交換を行うことができた。また、判例事例研究会において、裁判外での当事国の動きと判決内容を照らし合わせながら、ケニアとソマリアの境界画定紛争に関する判決を報告を行い議論することができた。早急に論考としてまとめる予定である。 これらの成果は、領土海洋問題への取り組みのプロセスが、各国間の交渉・裁判・条約交渉というさまざな段階において重層的かつ複合的に扱われていることに接近するために重要な意義を有する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
領土海洋問題に関連する個別の判決に関して、その裁判過程全体を分析し、意義と限界を検討するという本課題の進捗については、①いくつの判決を扱えるのか、それらの裁判過程をどこまでカバーできるのかという量的評価と、②いかに重要な判決を選択できるのか、どれほど深く、かつ多様な視点から分析できるかという質的評価がなされることになるだろう。そのような観点からは、コロナ禍において、国際会議や渡航しての打ち合わせも中止になり、研究会もオンラインとなり、研究会合に付随しての議論の場が著しく制約されたものの、幸いにも研究期間の延長が認められたため、かろうじて、関連する諸判決に横ぐしを通しながら特定のテーマに対する示唆を得る共同研究者たちの研究成果に触れることができた。個々の判決の丹念な分析を対話によって行うという本研究課題が予定する研究手法とは大きく異なるものの、個々の判決の分析の位置づけについて示唆を得ることができたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
感染症予防による渡航制限のため研究期間の延長を申請し、徐々に規制緩和されてきたものの、先行きが見通せない。フォローアップとして在外研究先であった英国あるいは国際シンポジウムの共催先であったフランスや韓国における国際セミナーの共催あるいは参加が可能であれば推進したいが、最終年度であることを踏まえて、臨機応変に小規模なワークショップの開催は視野に入れつつも、渡航できない可能性を前提に、既に着手済みの事件と合わせて、さらに本研究課題では直接扱う予定はないものの、本研究課題の基課題において分析を行っているペドラ・ブランカ事件やリギタン・シパダン事件・エリトリア・イエメン事件などとの総合的な検討を行い、今までの研究成果を基課題との連携も見据えて、公表論文としてまとめる等の作業を進める。
|
Research Products
(1 results)