2018 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションと労働者の多様性の空間経済学分析:日米データによる実証分析
Project/Area Number |
17KK0068
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 和博 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10362633)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | イノベーション / 文化的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画の通り、2018年8月30日からUniversity of California, Irvineに滞在し、理論モデルの構築、データの収集、実証研究のためのプログラミング言語の習得を行っている。本プロジェクトでは、労働者の言語、文化的背景の多様性を組み込んだ理論モデルを構築し、さらに実証研究を行う計画であった。労働者の文化的背景と生産性の関係に関する理論モデルの構築は当初の計画通りに進んでいると言って良い。文化的背景の多様な労働者が異なる集団に帰属意識を持っていると、集団全体の生産性は上がることも下がることもある。各労働者が保有する情報の受け渡しに高い費用がかかるような場合には、文化的背景の多様性は生産性を下げうるが、労働者の文化的背景は異なるものの、彼等が同一の目的を持って行動できる場合、つまり同一の集団に帰属意識を持っている場合は、集団の生産性は向上する。理論モデルによって、以上のような結論が生み出された。 次に、この結論をアメリカのデータによって実証的に検討する予定である。この実証研究を行うにあたり、統計プログラミング言語Rを使うことが適切であることがわかった。RはUniversity of California, Irvineを始め、アメリカ及び日本で実証研究を行う経済学研究者の間では広く使われる言語である。現在議論を行っている研究者達がRを使っている場合が多く、彼らと共同研究を行う際にはRを使った方が研究方法に互換性があるので生産性が改善する。また、Rを使うことにより、構造推定を行うことも可能である。以上の理由により、現在はデータ収集とともに、プログラミング言語Rを習得すると同時に、実証研究の枠組みを考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、理論モデルの構築とともに、アメリカのデータを収集する計画であった。この計画通り、理論モデルの構築は順調に進んでいると言って良い。理論モデルの結論も当初考えていたとおりである。もっとも、期待通りの結論が出る理論モデルは意外性がないとも考えられるため、今後、モデルを再構築することは考えられる。次に、実証研究に関しては、当初考えていたよりも難しいというのが、現在の感想である。University of California, Irvineに渡航後、Jan K. Brueckner教授をはじめ、多くの人と研究計画について議論した。その中で、理論モデルに関しては大きな批判は聞かれなかったが、実証研究の計画に関しては見通しが楽観的過ぎるのではないかというコメントが多かった。具体的に言うと、理論モデルを誘導型にすることが難しいため、構造推定を行うことが必要なのだ。そういった中で、実証研究の方法全体の枠組みを再構築する必要が出てきた。そのため、University of California, Irvineに渡航後より、プログラミング言語Rに関する情報収集、及びその習得に取り掛かった。周囲の研究者たちの協力、指導もあり、Rに関する情報収集とその習得は見通しが立っている。この言語を習得することにより、手に入れたデータを適切に加工することが可能となり、さらに構造推定を行うことも視野に入ってきた。現在はRによってプログラムを書いている過程であり、実証研究の出発点にたった所だということが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、現在は新たなプログラミング言語の習得に取り組んでいる。プログラミング言語Rの習得によって、データを加工する際の自由度があがった。このことにより、欠損値を多く含んだデータであっても適切に処理することが可能になり、実証研究を行う準備が整ってきたといえる。また、Rの習得によって実証研究の際に自らプログラムを書くことが出来るようになった。このことは、より広範にわたる実証方法が可能になったことを意味している。特に、技術的な観点から難しいと考えてきた構造推定が可能になったことは、今後の研究の可能性を大きくしてくれた。 University of California, Irvineには8月まで滞在し、それから日本に帰国する予定である。4月から8月までの滞在中に、Jan K. Brueckner教授との議論の機会を多く持ち、実証の包括的枠組み、統計的方法に関してより考察を深めて行きたいと思っている。Brueckner教授は実証研究の経験が豊富であり、本プロジェクト推進中にも多くの提言を行ってくれた。特に、実証の技術的な側面に関しては、彼からのアドバイスによって研究の枠組みが決まってきたと言って良い。今後も、彼と議論する中でよりよい方法を探って行きたい。 9月以降は、実証研究に専念する予定である。特に、日本で行ってきた研究の実証部分を全面的に再構成する。構造推定をやり直すことにより、より適切な実証方法で研究を進めて行きたいと思っている。
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Research Products
(1 results)