2019 Fiscal Year Research-status Report
The Role of U.S. Overseas Troops in General and Immediate Extended Deterrence
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17KK0076
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
籠谷 公司 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (60723195)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 同盟研究 / 在外米軍 / 一般抑止 / 緊急抑止 / 情報伝達 / 約束の強制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の出発点となる基課題では、在外米軍の駐留に関わる予算審議や在外米軍の配置展開から米国の決意の強さに関する情報が伝達され、一般抑止の成否を左右する点について研究してきた。「挑戦国が標的国への挑戦を始める際に、標的国である米国の同盟国と米国の結びつきと他の米国の同盟国と米国との結びつきを比較するよりも、標的国である米国の同盟国と米国との結びつきの時系列の比較から情報を更新する」ことの大切さを査読者に十分に伝えることができていなかったため、景気の変動を明示的に示す形で基課題の数理モデルを書き直すことに多くの時間を割いた。 2019年9月1日からカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で在外研究を開始し、その前半は本課題に必要な分析手法や近年の研究動向を把握するために時間を費やした。また、軍事動員を行うほど地域における戦闘に勝利する確率を踏まえて、軍事介入を魅力的なものにする形で約束を強制する役割を考察する先行研究の理解に取り組んだ。 他方、本課題と関連する研究として、米国の複数の同盟国間における対立と協調を理解するために、ある同盟国の安全保障政策に対する他の同盟国からの外交的非難が当該同盟国間の信用を崩壊させる過程について実験アプローチを用いて分析した。日本、韓国、台湾におけるサーベイ実験から、安全保障政策に対する外交的非難が標的となる国家において愛国心を喚起し、強硬な世論を形成することが分かった。2019年から2020年3月までは、これらの研究成果を複数の学会やワークショップで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年9月1日に在外研究を開始し、本課題の基礎となる知識や技術の獲得を始めた。最初に、在外米軍の展開状況をネットワークとして測定したデータとして表現するために、秋学期に統計学部のネットワーク分析の講義を聴講し、ネットワーク分析の理論部分を概観することに努めた。 同時に、軍事動員を行うほど戦争に勝利する確率が上昇することの国際危機交渉に与える影響を分析する conflict success function の先行研究、緊急抑止に関する事例研究などを概観することに努めた。 在外研究を開始してから月1回のペースでカリフォルニア大学サンディエゴ校に足を運び共同研究者のガーツキー先生と共同研究を進める予定であった。しかしながら、コロナウィルスの世界的な流行を背景に、米国では外出禁止が発令された。その結果、2020年1月の会合を最後に研究の進捗状況を確認し、問題点を相談する会合の機会を失った。また、外出禁止令のため、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の紛争経済学の教授二人と直接会合し、研究成果について議論する予定であったが実現していない。最後に、UCLA Department of Naval Science でインタビューを予定していた大佐が異動となり、インタビューを行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基課題の数理モデルに conflict success function を組み入れ、一般抑止と緊急抑止で軍事動員が果たす役割を分析しようと試みる。また、検証する際には、米国の決意の弱さを認識した挑戦国のみが標的国に挑戦する結果として一般抑止の失敗が起こるという観測選択効果(selection bias)を踏まえて、軍事動員と緊急抑止の成否の関係性を探ることを目的とした統計モデルを用いてパネルデータを分析していく。 軍事行動の経験を持つ人物とのインタビューについては、日本と韓国に配置された経験のある大佐が異動してきたので、外出禁止令が緩和された後にインタビューできる機会を探る。UCIの紛争経済学の教授二人との直接会合については、外出禁止令が緩和された後に機会を探る。最悪、これらが実現する前に帰国することになった場合、フォローアップ調査でロサンゼルスに短期間の滞在を考える。
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