2020 Fiscal Year Research-status Report
The Role of U.S. Overseas Troops in General and Immediate Extended Deterrence
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17KK0076
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
籠谷 公司 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (60723195)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 同盟研究 / 在外米軍 / 一般抑止 / 緊急抑止 / 情報伝達 / 外交的非難 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の出発点となる基課題では、在外米軍の駐留に関わる予算審議や在外米軍の配置展開から米国の決意の強さに関する情報が伝達され、一般抑止の成否を左右する点について研究してきた。景気の変動を明示的に示す形で数理モデルを書き直し、「挑戦国が標的国への挑戦を始める際に、標的国である米国の同盟国と米国の結びつきと他の米国の同盟国と米国との結びつきを比較するよりも、標的国である米国の同盟国と米国との結びつきの時系列の比較から情報を更新する」ことを明確にした。 2019年9月1日から2020年6月末までのカリフォルニア大学ロサンゼルス校における在外研究中、その前半を本課題に必要な分析手法や近年の研究動向を把握するために時間を費やした。在外研究の後半から2020年3月までは、軍事動員を行うほど地域における戦闘に勝利する確率を踏まえて、軍事介入を魅力的なものにする形で約束を強制するため、一般抑止の確率を高めるが、一般抑止が破綻すると国際危機が激化する可能性が見えてきた。 他方、本課題と関連する研究として、米国の複数の同盟国間における対立と協調を理解するために、ある同盟国の安全保障政策に対する他の同盟国からの外交的非難が当該同盟国間の信用を崩壊させる過程について実験アプローチを用いて分析した。日本、韓国、台湾におけるサーベイ実験から、安全保障政策に対する外交的非難が標的となる国家において愛国心を喚起し、強硬な世論を形成することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年9月1日から継続中であったカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)における在外研究を予定よりも2か月ほど早めて帰国した。これは、COVID-19の感染拡大に対応するための緊急事態宣言の下で、大学が閉鎖され、共同研究者とも対面で会うことができなくなったためである。 本課題の出発点となる基課題を扱う論文は、在外米軍の駐留に関わる予算審議や在外米軍の配置展開から米国の決意の強さに関する情報が伝達され、一般抑止の成否を左右する点について研究してきた。2020年度中に国際誌に投稿し、不掲載となったため、他の国際誌に投稿するための改訂を行っている。 他方、本課題と関連する研究として、米国の複数の同盟国間における対立と協調を理解する共同研究を始めた。ある同盟国の安全保障政策に対する他の同盟国からの外交的非難が当該同盟国間の信用を崩壊させる過程をウェブサーベイ実験を用いて分析した。日本、韓国、台湾におけるサーベイ実験から、安全保障政策に対する外交的非難が標的となる国家において愛国心を喚起し、強硬な世論を形成することが明らかになった。各国の結果を個々の論文にまとめる作業を行い、台湾に関する論文は国際誌で「修正して再投稿」という結果となったので、在外研究中の研究成果を少しずつ出版に繋がる可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
在外米軍の抑止力の研究成果の公表については、基課題の論文を出版できれば、その後は比較的順調に残りの研究を出版できると思われる。既存研究で議論された伝統的な変数が統計的有意性を失い、私たちが構築した理論を検証するための変数が統計的有意性を持つ点で結果を覆したため、査読者からの厳しい批判に対処することに時間を割いてきた。2021年度中に、修正して再投稿の状態にまで持っていきたい。 アメリカの同盟国間の対立と協調に関する研究は、日本、韓国、台湾の事例を取り扱った論文の出版を目指す。また、他の同盟国からの避難を受けて、アメリカからの支持や不支持が行われたときの世論の変化の解明を目指し、各国でウェブサーベイ実験を行う。 今回、在外研究中に行う予定でキャンセルになったインタビュー調査のフォローアップの可能性を引き続き探るようにする。しかしながら、COVID-19のワクチン供給ならびに飛行機移動が可能にならない限り、この点を解決するのは難しいかもしれない。
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