2020 Fiscal Year Research-status Report
米国および世界の繰り返し地震による浅部プレート境界非地震性すべりの普遍的性質解明
Project/Area Number |
17KK0081
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 直希 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80374908)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 繰り返し地震 / S-net / プレート境界地震 / サンアンドレアス断層 / スロースリップ / 非地震性すべり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 米国のサンアンドレアス断層および世界のプレート境界での繰り返し地震を調査し、プレート境界浅部での非地震性すべりの役割を調べる。本年度は世界的なコロナウイルスの蔓延のため、前半はアメリカへの渡航を延期し、国内での研究を続けた。その結果、昨年度のカナダ地質調査所への滞在によるKeling Wang博士と共同研究について、論文投稿を進め本年度Nature Communications誌に受理され、出版された。この研究は、東北沖に新たに構築された世界初の広域海底観測網(S-net)のデータを解析し、太平洋プレートの沈み込みに伴う変形機構について明らかにしたものである。また、これにより、S-netのデータを繰り返し地震解析に用いる準備もできた。その後、2021年1月からカリフォルニア大学バークレー校にVisiting Scholarとして滞在し、Roland Burgmann教授と共同研究を開始した。毎週行われる研究室セミナーおよび個別ミーティングを通じ、本研究課題に関連する知識を身につける他、大学の地震学分野のセミナーでの発表により、本研究の成果の紹介も行った。Burgmann教授との共同研究の結果、東北沖地震の共著論文を執筆し、Review of Geophysics誌に受理された。この論文では、東北沖地震前の地震ポテンシャルに関する知識とその後10年の研究の発展をレビューし、甚大な被害をもたらした東北沖地震から得られた知識を整理した。さらに、カリフォルニア大学バークレー校では、現地の地震ネットワークおよび世界の地震ネットワークのデータ利用方法を習得し、カリフォルニアおよび世界の観測網を用いた繰り返し地震の抽出プログラムの開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究によるカナダ地質調査所(Geological Survey of Canada)への滞在により行った共同研究が、論文の出版につながった。アメリカへの滞在には遅延が生じたが、延期中は、滞在予定の研究室でオンラインで行われていた研究室セミナーに日本から参加させていただき、研究に関する議論ができた。カリフォルニア大学バークレー校への滞在を開始してからは、カリフォルニアおよび世界の地震観測データの利用方法を習得し、サンアンドレアス断層および世界のプレート境界での繰り返し地震を調査に着手することができた。また、現地の学会やセミナーに参加することで、周辺分野の知識の習得や研究紹介を行うことができた。さらに、年度後半には、所属および滞在先の大学の許可をえて、アメリカ滞在も実現でき、受け入れ教員であるBurgmann教授と共同研究を行うことで、共著論文も出版もすることができた。以上のように、国内での研究の推進に加え、昨年度のカナダへの渡航および本年度の米国への滞在開始により、研究は、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では, 米国のサンアンドレアス断層および世界のプレート境界での繰り返し地震を調査する。2021年度は,カリフォルニア大学バークレー校への渡航が実現したので、今後、現地の環境を最大限生かして研究を進める。カリフォルニアの地震波形に対応したプログラムの開発をすすめ、サンアンドレアス断層の高精度の観測網のデータを用いた研究を進める。そして、東北で見られた周期的スロースリップや階層的地震分布,地震サイクルと微小地震活動の関係などを性質が異なるタイプでどのように見られるかを検討する.世界の繰り返し地震の抽出では、抽出基準を確定させた後, 各地域での分布の特徴について調べる。また、既存の波形相似性のデータベースを用いた世界の繰り返し地震の抽出も行う。計画していた南カリフォルニア大学への短期滞在は,全体の渡航計画が遅れているため, Berkeley滞在後に短期間の訪問を行うかオンラインで打ち合わせを行うことで研究を進める。帰国後は,カリフォルニアおよび世界の繰り返し地震の両方を用い,地域により異なる地質・断層運動を活かした, 非地震性すべりや繰り返し地震の発生メカニズムの理解を進展させる。具体的には,世界の大地震の発生域や地殻変動データを用いたプレート間固着度推定と繰り返し地震・非地震性すべりの関係の調査やプレート境界付近の構造と固着の関係,プレート境界周囲の応力場や地震活動との関係の調査などを各領域での特性を比較しながら行う。
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