2018 Fiscal Year Research-status Report
pDNAの高次構造制御を基盤とする構造化遺伝子キャリアの機能展開と学理創出
Project/Area Number |
17KK0102
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
長田 健介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員(任常) (10396947)
|
Project Period (FY) |
2018 – 2020
|
Keywords | 薬物送達システム / 非ウイルス性遺伝子デリバリーシステム / 高分子ミセル / ポリイオンコンプレックス / DNA凝縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、DNAと高分子からなる複合体の高次構造制御とそれを遺伝子デリバリーシステムとして医療応用する基研究を、国際共同研究を通じてDNA固有の高次構造形成の基礎学術を深化させつつ、構造化遺伝子デリバリーシステムとして実用化を目指すトランスレーション研究を推進することを計画している。 2018年度は、マインツ大学において構造化遺伝子デリバリーシステムの適用疾患を具体的に協議するとともに、関連するベンチャー企業を訪問し、トランスレーショナル研究体制を視察した。また、マックスプランク高分子化学研究所の研究者と、高分子集合体を基盤とする核磁気共鳴画像法(MRI)用ナノ造影剤の共同開発を新たに企画した。ナノ造影剤は、これまで十分な知見が得られていない10~100 nmの生体構造を明らかにするもので、革新的疾患治療システムとして着目されているナノメディシンを戦略的に活用する必要条件を明確にするという重要な意義を持つ。これに関連して、多孔性無機ナノ粒子に造影効果のある常磁性金属を担持させたナノ造影剤の開発を着想し、多孔性無機ナノ粒子を専門とする研究者(VISTEC, タイ国)との協議を始めた。 mRNAはタンパク合成の基になることから、その医療応用に期待が寄せられている。しかしながら、mRNAはDNAと比べて生体内での安定性が極端に低いことが問題となっている。そこで、DNAナノテクノロジーを活用してmRNAに高次構造をつくらせる戦略を立て、ドレスデン工科大学にて具体的な研究戦略を協議した。その第一段階として、細胞内でデリバリーシステムからmRNAを放出する操作が可能であるかの動作確認をモデル実験で行った。 以上のように、2018年度は当初計画に沿ったかたちでの共同研究が進むのみならず、新たにMRI用ナノ造影剤の共同開発へと研究が発展している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したように、共同研究先機関において当方の開発する構造化遺伝子デリバリーシステムの性能を共有し、その適用疾患について協議した。また、先方の進める核酸治療のベンチャー企業とのトランスレーショナル研究体制を視察し、課題と将来性を共有した。その際、核酸デリバリーシステムを含め、革新的疾患治療システムとして期待されているナノメディシンのポテンシャルを最大限に活用するには、体内の構造をnmサイズで知ることが第一との共通理解に至り、そのような生体ナノ構造探索システムを共同開発することで合意した。具体的には、当方の得意とする高分子集合体の高次構造制御と先方の得意とする高分子合成技術とを融合させたナノ造影剤を開発し、それを当方の所属機関が保有する高磁場MRIを用いて生体ナノ構造を解析するという共同研究を企画した。 mRNAデリバリーシステムに関して、当初はDNAナノテクノロジー技術を用いてmRNAに高次構造をつくらせることを企図していたが、RNAの特異性からむしろDNAでmRNAを運ぶ“箱”をつくり、その中にmRNAを封入するという戦略を立案した。2018年度にはモデル系を構築し、細胞に侵入後mRNAが箱から放出される設計が可能かどうかを検証した。予備検討から、細胞内に存在する酵素によってDNAオリガミとmRNAとを結ぶ結合点が切断されたことを示唆する結果が得られている。 また、ナノ造影剤を構想するなかで、多孔質無機ナノ粒子に造影効果のある常磁性金属を担持させる戦略を着想し、その専門家(VISTEC, タイ国)と協議をはじめた。 このように共同研究は当初計画通り進んでおり、また新たにMRI用ナノ造影剤の共同研究へと分野横断的な国際ネットワークを構築しつつ発展していることから、おおむね順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
マインツ大学およびマックスプランク高分子化学研究所では、当方の開発する構造化遺伝子デリバリーシステムと先方の保有する実験系とのマッチングを引き続き協議するとともに、新たに企画したMRI用ナノ造影剤の開発を進める。具体的には、造影効果を持つ常磁性金属としてガドリニウムおよびマンガンを選択し、それを生体適合性かつ血中長期滞留性を有する高分子集合体に担持させたナノゲルの調製を試みる。一方の多孔質無機ナノ粒子は、常磁性金属を孔に結合させれば水分子と広く接触することになり、造影効果の飛躍的な増大が期待出来る。これを実現するため、VISTECの研究者が保有する多孔質無機ナノ粒子を活用し、金属の担持および造影効果の検証をはじめる。期待通り造影効果が得られるであれば生体適合性の付与のための化学修飾を試みる。 DNAナノテクノロジーを基盤とするmRNAデリバリーシステムの開発に関し、当該共同研究者が2019年初頭に米国ケント州立大学に移動したため、今後は米国に滞在して共同研究を進める。モデル系を用いた予備検討では、DNAオリガミに結合させたmRNAの結合部位の切断が示唆された事から、その確証実験を第一に行い、その後に箱となるDNAオリガミの設計および調製へと進む。 他方、DNA複合体の多様な高次構造形成に関する基礎学術研究を進めるため、ミュンヘン大学の物理学者との協議を始める。
|
Research Products
(19 results)